
認知症による「資産凍結」への備え
実家とお金の管理を、元気なうちに子どもへ託す。
家族信託(民事信託)の設計と信託契約書の原案作成、公証役場との調整をお手伝いします。任意後見・遺言との使い分けから一緒に考え、信託登記は司法書士、税務は税理士と連携して進めます。
親が認知症になると、親名義の預金は引き出しにくくなり、実家は売ることも貸すこともできなくなります。「施設の費用に充てるつもりだった実家が売れない」というご相談は、決して珍しくありません。家族信託は、こうした事態に元気なうちから備える方法の一つです。ただし万能ではなく、任意後見や遺言と組み合わせて初めて十分な備えになります。
このページの要点
- 家族信託は、親(委託者)が自宅や預金などの財産を、信頼できる子(受託者)に託し、決めた目的に沿って管理・処分してもらう仕組みです。信託法に基づき、契約(信託契約)で始めるのが一般的です(信託法 第3条第1号)。
- 親が認知症になった後も、受託者である子が、契約で決めた範囲で実家の売却や賃貸不動産の管理を続けられます。いわゆる「資産凍結」への備えになります。
- 親自身を受益者にする形(自益信託)なら、信託を始めた時点では贈与税はかかりません(相続税法 第9条の2の要件に当たらないため)。
- 一方で、介護サービスや施設入所の契約など「身の回りの契約」は家族信託ではできません。これは任意後見で備えます。
- 当事務所は、任意後見・遺言との使い分けの整理、信託契約書の原案作成、公証役場との調整を担当し、信託登記は司法書士、税務は税理士と連携して進めます。
最終更新: 2026年9月 / 行政書士 齋藤 光宏(開業24年・日本行政書士会連合会 登録第02092927号)
How it works
家族信託の仕組み 登場するのは3人
信託とは、財産を託された人が、一定の目的に従って、その財産の管理や処分をすることです(信託法 第2条第1項)。家族信託では、この3つの役割をご家族で分担します。
委託者
財産を託す人(多くは親)
信託する財産と目的を決めます。信託契約を結ぶ時点で、契約内容を理解できる判断能力が必要です。
受託者
財産を預かって管理する人(多くは子)
信託の目的に従って財産を管理・処分します。自分の財産と分けて管理し、帳簿をつけ、受益者に報告する義務を負います(信託法 第29条・第34条・第37条)。
受益者
信託財産から利益を受ける人(多くは親自身)
信託された実家に住み続ける、賃料や売却代金を生活費・介護費用に充てる、といった利益を受けます。
よくある形は、親が委託者と受益者を兼ね、子が受託者になるものです。財産の名義は子に移りますが、財産から利益を受けるのは引き続き親です。親が亡くなったときに信託を終わらせ、残った財産を誰に帰属させるかも、契約で決めておきます(信託法 第182条)。
Use cases
家族信託が役に立つ場面
施設に入った後、実家を売って費用に充てたい
親が認知症になると、親名義の実家は売れなくなります。実家を信託しておけば、受託者である子が売主となって売却し、代金を親の介護費用に充てられます。
賃貸アパートの経営を子に引き継ぎたい
入居者との契約更新、修繕、管理会社との契約などを受託者が行います。大規模修繕や建替えの資金を借り入れる場合は、金融機関との事前相談が欠かせません。
夫婦の一方が亡くなった後、次の承継先まで決めておきたい
「自分の死後は妻に、妻の死後は長男に」というように、受益者を順番に定めることができます(受益者連続型信託・信託法 第91条)。遺言では、自分の次の世代の承継先までは決められません。
障害のあるお子さまの生活を、親亡き後も支えたい
お子さまを受益者とし、兄弟姉妹などが受託者となって生活費を渡していく設計があります。身上面の支援は法定後見や福祉制度との組み合わせが必要で、個別の検討が欠かせません。
Limits
家族信託でできないこと
家族信託は財産管理の仕組みです。ご相談の場では、できることよりも先に、できないことを必ずご説明しています。
- 介護サービス・施設入所・入院などの契約(身上保護)は、受託者の権限ではできません。任意後見や法定後見で備えます。
- 信託していない財産(年金の受取口座など)は、受託者が管理できません。
- 専門家や会社が報酬を得て「業として」受託者になることは、信託業の免許・登録がなければできません(信託業法 第3条)。受託者はご家族が務めるのが基本です。
- 家族信託そのものに節税効果があるわけではありません。相続税の計算では、信託した財産も受益者の財産として扱われます。
- 信託から生じた不動産所得の損失は、他の所得と損益通算できません(租税特別措置法 第41条の4の2)。
Compare
家族信託・任意後見・法定後見の違い
財産を「動かす」なら家族信託、身の回りの「契約」は任意後見。役割が違うため、両方を組み合わせるご家庭が多くあります。
| 比較項目 | 家族信託 | 任意後見 | 法定後見 |
|---|---|---|---|
| 始める時期 | 元気なうちに契約(契約した時から効力が生じる) | 元気なうちに契約(効力は監督人選任後) | 判断能力が衰えた後に申立て |
| 財産を任せる人 | 受託者(ご本人が選ぶ) | 任意後見人(ご本人が選ぶ) | 後見人等(家庭裁判所が選ぶ) |
| 対象 | 信託した財産だけ | 代理権目録で定めた事務 | 原則としてご本人の財産全般 |
| 不動産の売却・建替え・運用 | 信託の目的と契約の範囲内で受託者の判断で可能 | 代理権の範囲内で可能。ご本人の財産を守る観点からの制約を受ける | 居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可が必要(民法 第859条の3)。相続税対策の贈与や投機的な運用は原則として認められない |
| 介護・医療・施設入所の契約 | できない | できる(代理権目録に入れた場合) | できる |
| 家庭裁判所・監督人の関与 | なし(信託監督人・受益者代理人を契約で置くことは可能) | 任意後見監督人が必ずつく | 家庭裁判所が監督 |
| 亡くなった後の財産の行き先 | 契約で次の受益者や帰属先を決められる | 決められない(遺言が必要) | 決められない(遺言が必要) |
Process
ご相談から信託の開始まで
ご相談から信託登記の完了まで、2〜3か月ほどを見込んでいます。金融機関の審査や関係者の日程によって前後します。
01
初回相談(無料)
担当: 当事務所
ご家族の状況と財産の内容を伺い、家族信託が本当に必要か、任意後見や遺言で足りるかを整理します。家族信託が合わないと判断した場合は、正直にそうお伝えします。
02
信託の設計
担当: 当事務所(税務は税理士・登記は司法書士と事前協議)
何を信託するか、誰を受託者・受益者にするか、受託者に何をどこまで任せるか、信託をいつ終わらせ、残った財産を誰に帰属させるかを決めます。
03
信託契約書の原案作成
担当: 当事務所
ご家族に読んでいただき、分かりにくい条項は一つずつ説明しながら修正します。
04
公証役場で信託契約公正証書を作成
担当: 当事務所が公証人と事前調整・当日立会い
法律上は公正証書でなくても信託契約は成立しますが、金融機関で信託口口座を開く際に公正証書を求められることが多いため、公正証書での作成をおすすめしています。
05
信託口口座の開設・金銭の移動
担当: 受託者・金融機関
受託者名義で、信託財産であることが分かる口座を開き、信託する金銭を移します。取扱いや条件は金融機関ごとに異なります。
06
不動産の信託登記
担当: 司法書士
所有権移転と信託の登記を同時に申請します(不動産登記法 第98条)。登記は連携する司法書士が担当します。
07
信託の運営
担当: 受託者(当事務所がサポート)
分別管理、帳簿の作成、年1回の報告、税務署への信託計算書の提出(収益が一定額を超える場合)などを受託者が行います。
Tax
税金と届出の基本
家族信託の税務は、受益者が誰かで決まります。概要は次のとおりです。個別の税額や申告は、連携する税理士が担当します。
信託を始めるとき
親が委託者兼受益者(自益信託)であれば、財産を受け取る人が変わらないため贈与税はかかりません。子など別の人を受益者にすると、その人が贈与を受けたものとみなされます(相続税法 第9条の2第1項)。
不動産を信託するときの税金
委託者から受託者への所有権移転の登記には登録免許税がかかりません(登録免許税法 第7条第1項第1号)。信託の登記には、固定資産税評価額の0.4%(土地は令和11年3月31日まで0.3%の軽減税率)がかかります。不動産取得税はかかりません(地方税法 第73条の7第3号)。
毎年の届出
受託者は、信託財産から生じる収益が年3万円を超える場合などに、翌年1月31日までに「信託の計算書」を税務署へ提出します(所得税法 第227条・同法施行規則 第96条)。
受益者が亡くなったとき
次の受益者は、信託財産を遺贈により取得したものとみなされ、相続税の対象になります。相続税の申告や試算は連携する税理士が担当します。
Fees
費用の目安
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 公証人手数料(信託契約公正証書) | 信託財産の価額に応じた手数料+13,000円 | 信託財産の価額が1億円以下の場合は13,000円が加算されます(公証人手数料令 第22条の2) |
| 登録免許税(不動産の信託登記) | 固定資産税評価額の0.4%(土地は0.3%) | 所有権移転分は非課税 |
| 司法書士報酬(信託登記) | 連携司法書士がお見積り | — |
| 税理士報酬(税務の試算・届出) | 連携税理士がお見積り | 必要な場合 |
| 当事務所報酬(設計・信託契約書の原案作成・公証役場との調整・立会い) | お見積り | 信託する財産の種類・数、関係者の人数で変わります。初回相談時に書面で提示します |
任意後見契約や公正証書遺言を同時に作成する場合は、公証役場での手続きを同じ日にまとめられます。費用はまとめてお見積りします。
Our role
当事務所の担当と、連携する専門家
当事務所(行政書士)が担当
- 家族信託・任意後見・遺言の使い分けのご相談
- 信託契約書の原案作成(行政書士法 第1条の3)
- 公証役場との事前調整・当日の立会い
- 受託者向けの帳簿・報告書の作り方のご説明
- 任意後見契約・公正証書遺言の原案作成
連携する専門家が担当
- 不動産の所有権移転・信託の登記(司法書士)
- 贈与税・相続税の試算、信託計算書などの税務(税理士)
- ご家族間で争いがある案件の代理・交渉(弁護士)
家族信託のよくあるご質問
- Q. 家族信託と任意後見は、どちらを選べばよいですか。
- A. 役割が違うため、どちらか一方ではなく組み合わせて考えるのが基本です。実家の売却や賃貸不動産の管理など、財産を積極的に動かす必要があるなら家族信託、介護や施設入所の契約など身の回りの手続きは任意後見で備えます。財産が預貯金と自宅だけで、売却の予定もない場合は、任意後見と遺言で足りることも多くあります。
- Q. 親がすでに認知症と診断されていますが、家族信託はできますか。
- A. 信託契約を結ぶには、親が契約の内容を理解できる判断能力が必要です。診断があっても症状が軽く、内容を理解できれば契約できる場合がありますが、判断能力が十分でない状態で結んだ契約は、後で無効を主張されるおそれがあります。公正証書にする場合は公証人が意思を確認します。早めのご相談をおすすめします。
- Q. 家族信託をすると、贈与税や相続税はどうなりますか。
- A. 親を受益者にする一般的な形なら、始めた時点で贈与税はかかりません。親が亡くなった後に次の受益者が財産を受け継ぐときは、相続税の対象になります。家族信託は相続税を減らすための制度ではない点にご注意ください。具体的な税額の試算は連携する税理士が担当します。
- Q. 受託者になった子どもは、信託財産を自由に使えるのですか。
- A. 使えません。受託者は信託の目的に従って、受益者のために財産を管理する義務を負います。自分の財産と分けて管理し、帳簿を作り、受益者に報告しなければなりません(信託法 第29条・第34条・第37条)。受託者を監督する「信託監督人」や「受益者代理人」を契約で置くこともできます。
- Q. 弁護士や行政書士に受託者になってもらえますか。
- A. 報酬を得て業として受託者になることは、信託業の免許・登録がなければできません(信託業法 第3条)。家族信託では、お子さまなどのご家族が受託者を務めるのが基本です。当事務所は、受託者となるご家族を契約書づくりと運営面で支える立場です。
- Q. 銀行の「遺言信託」とは違うのですか。
- A. 別のものです。信託銀行などが扱う「遺言信託」は、遺言書の作成相談・保管・遺言執行を引き受けるサービスの名称です。家族信託(民事信託)は、ご家族が受託者になって財産を管理する信託法上の仕組みです。
- Q. 信託口口座はどの銀行でも作れますか。
- A. 信託口口座の取扱いは金融機関ごとに異なり、公正証書による信託契約や一定以上の預入額を条件とする金融機関もあります。当事務所では、設計の段階で口座を開く金融機関の条件を確認してから契約書を仕上げます。
- Q. 家族信託をしていれば、遺言は不要ですか。
- A. 信託した財産の行き先は信託契約で決められますが、信託していない財産の行き先は遺言で決める必要があります。家族信託と公正証書遺言を併せて作成するご家庭が多いのはそのためです。
- Q. 途中でやめることはできますか。
- A. 委託者と受益者は、信託契約に別段の定めがなければ、いつでも合意により信託を終了できます(信託法 第164条第1項)。終了の事由や、終了後に残った財産を誰に帰属させるかは、契約の段階で決めておきます。
Guides
家族信託の詳しい解説(論点別)
いずれも法令・国税庁などの公的資料を出典として示しています。
任意後見・法定後見・家族信託・遺言を一覧で比べたい方へ
認知症への備え 4つの方法の使い分け家族信託が必要かどうかから、ご相談ください
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主な出典
※このページは家族信託の概要と当事務所の支援内容をご紹介するものです。税務上の取扱いは個別事情により異なるため、税理士の確認を前提に設計します。
※法令・税制は改正されることがあります。掲載内容は2026年9月時点の情報です。
最終更新: 2026年9月
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