家族信託 / 基本
家族信託の仕組み—委託者・受託者・受益者と、できること・できないこと
家族信託(民事信託)の基本を、信託法の条文に沿って説明します。委託者・受託者・受益者の役割、受託者の義務(善管注意・分別管理・帳簿と報告)、信託の終わり方と残余財産の帰属、家族信託でできないこと(身上保護など)まで、横浜の行政書士が整理します。
「家族信託」は法律上の用語ではなく、信託法に基づく信託のうち、ご家族が受託者となって財産を管理するものを指す呼び方です。「民事信託」と呼ばれることもあります。このページでは、仕組みの基本を条文に沿って説明します。
結論
- 信託とは、特定の人が一定の目的に従って、財産の管理や処分などをすることです(信託法 第2条第1項)。
- 家族信託では、親が委託者、子が受託者、親自身が受益者となる形が一般的です。この形(自益信託)では、信託を始めたときに贈与税はかかりません。
- 受託者は、財産を自分のものと分けて管理し、帳簿をつけて受益者に報告する義務を負います。
- 介護や施設入所の契約など、身の回りの契約は家族信託ではできません。
3つの役割
| 役割 | 意味 | 典型例 |
|---|---|---|
| 委託者 | 財産を託す人 | 親 |
| 受託者 | 託された財産を、信託の目的に従って管理・処分する人 | 子 |
| 受益者 | 受益権を持ち、信託財産から利益を受ける人(信託法 第2条第6項) | 親自身(親の死後は配偶者や子) |
財産の名義は受託者に移りますが、受託者は自分のためにその財産を使うことはできません。受託者は、受益者として利益を受ける場合を除き、信託の利益を受けることが禁じられています(信託法 第8条)。
信託の始め方
信託法は、信託の方法として、信託契約・遺言・自己信託の3つを定めています(信託法 第3条)。家族信託の多くは、親と子の間の信託契約で始めます。信託契約は、契約を結んだ時から効力を生じます(同法 第4条第1項)。法律上は公正証書でなくても成立しますが、信託口口座の開設などで公正証書を求められることが多いため、実務では公正証書で作成するのが一般的です。
受託者の主な義務
| 義務 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 善管注意義務 | 善良な管理者の注意をもって信託事務を処理する | 信託法 第29条第2項 |
| 分別管理義務 | 信託財産と自分の財産を分けて管理する。不動産は信託の登記をする | 同法 第34条 |
| 帳簿の作成と報告 | 帳簿を作り、毎年1回、貸借対照表・損益計算書などを作って受益者に報告する。書類は10年保存 | 同法 第37条 |
受託者はご家族ですが、責任は軽くありません。当事務所では、受託者となるお子さまに、記録の付け方と報告書の作り方を具体的にご説明しています。受託者を監督する「信託監督人」(同法 第131条以下)や、受益者に代わって権利を行使する「受益者代理人」(同法 第138条以下)を契約で置くこともできます。
誰が受託者になれるか
信託の引受けを営業として行うこと(信託業)は、内閣総理大臣の免許または登録を受けた者でなければできません(信託業法 第2条第1項・第3条)。そのため、弁護士・司法書士・行政書士などの専門職が報酬を得て業として受託者になることはできず、家族信託ではご家族が受託者を務めるのが基本です。
信託の終わり方
信託は、信託の目的を達成したとき、契約で定めた終了事由が生じたときなどに終了します(信託法 第163条)。委託者と受益者は、契約に別段の定めがなければ、いつでも合意で信託を終了できます(同法 第164条第1項)。
家族信託では「親が亡くなったとき」を終了事由とし、残った財産を受け取る人(帰属権利者)を契約で決めておくのが一般的です。定めがない場合は、委託者やその相続人などに帰属するものとみなされます(同法 第182条)。
家族信託でできないこと
- 介護サービス・施設入所・入院などの契約(身上保護)→ 任意後見で備えます
- 信託していない財産(年金の受取口座など)の管理
- 相続税を減らすこと(信託した財産も相続税の対象です)
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※信託の設計はご家族の状況によって大きく変わります。個別の設計は初回相談でうかがいます。
行政書士あおば行政法務事務所 齋藤光宏