任意後見契約(移行型) / 比較
認知症への備え 4つの方法—任意後見・法定後見・家族信託・遺言の使い分け
親の認知症や老後に備える方法として、任意後見・法定後見・家族信託・遺言をどう使い分けるかを一覧で比較します。「生きている間の財産管理」「身の回りの契約」「亡くなった後の財産の行き先」の3つに分けて考えると整理できます。横浜の行政書士が、よくある組み合わせと判断の目安を示します。
「親が認知症になったら何が困るのか」「何を用意しておけばよいのか」。ご相談の最初に、多くの方がこう尋ねられます。任意後見・法定後見・家族信託・遺言は、それぞれ役に立つ場面が違います。このページでは、4つを横に並べて使い分けの目安を示します。
結論
- 備えは「生きている間の財産管理」「生きている間の身の回りの契約」「亡くなった後の財産の行き先」の3つに分けて考えます。
- 身の回りの契約(介護・施設入所・入院など)に備えられるのは任意後見と法定後見です。家族信託ではできません。
- 実家の売却や賃貸不動産の管理など、財産を積極的に動かすなら家族信託が向いています。
- 亡くなった後の財産の行き先は遺言(家族信託に入れた財産は信託契約)で決めます。任意後見・法定後見はご本人の死亡で終わります。
- 法定後見以外の3つは、ご本人に判断能力があるうちにしか作れません。
4つの方法の比較
| 任意後見 | 法定後見 | 家族信託 | 遺言 | |
|---|---|---|---|---|
| いつ作る・始めるか | 元気なうちに契約。判断能力が衰えたら発効 | 判断能力が衰えた後に申立て | 元気なうちに契約。契約時から効力 | 元気なうちに作成。死亡時に効力 |
| 誰を選ぶか | ご本人が任意後見人を選ぶ | 家庭裁判所が選ぶ | ご本人が受託者を選ぶ | ご本人が承継先・遺言執行者を決める |
| 預貯金・年金の管理 | ○ | ○ | 信託した財産だけ○ | ― |
| 不動産の売却・活用 | 代理権の範囲内で○(財産を守る観点からの制約あり) | 居住用は家庭裁判所の許可が必要 | 契約の範囲で受託者が判断できる | ― |
| 介護・施設入所・入院の契約 | ○ | ○ | × | ― |
| 家庭裁判所・監督人 | 任意後見監督人が必ずつく | 家庭裁判所が監督 | 原則なし(契約で監督役を置ける) | ― |
| 亡くなった後の財産の行き先 | × | × | 信託した財産は契約で決められる | ○ |
| 公正証書が必要か | 必要 | ―(家庭裁判所の審判) | 法律上は不要。金融機関は公正証書を求めることが多い | 公正証書遺言か自筆証書遺言 |
よくある組み合わせ
自宅と預貯金が中心で、売却の予定がないご家庭
任意後見(移行型)+公正証書遺言が基本です。生きている間の財産管理と契約は任意後見で、亡くなった後の財産の行き先は遺言で決めます。家族信託まで必要になることは多くありません。
施設に入ったら実家を売って費用に充てたいご家庭
家族信託(実家)+任意後見+遺言を検討します。実家を信託しておけば、受託者であるお子さまが売主となって売却できます。施設入所の契約や介護サービスの手続きは任意後見で、信託しなかった財産の行き先は遺言で備えます。
賃貸アパートなど収益不動産をお持ちのご家庭
家族信託(収益不動産)+任意後見+遺言が典型です。入居者との契約や修繕の判断を受託者が続けられるようにします。家族信託の税務には特有の論点があるため、税理士と一緒に設計します。
お子さまのいないご夫婦・おひとりの方
任意後見+死後事務委任契約+公正証書遺言の3点をまとめて準備するのが一般的です。亡くなった後の葬儀・納骨・住まいの片付けまで頼める人を決めておきます。
すでに判断能力がかなり衰えている場合
任意後見・家族信託・遺言は、いずれもご本人が内容を理解して意思を示せることが前提です。それが難しい場合は、法定後見の申立てを検討します。申立ては司法書士・弁護士と連携して進めます。
判断の目安(簡易チェック)
- 近いうちに不動産を売る・貸す・建て替える可能性がある → 家族信託を検討
- 介護や施設入所の手続きを任せたい → 任意後見
- お子さまに後見人になってほしい → 任意後見(法定後見では親族が選ばれない場合が多い)
- 財産の分け方でご家族が揉めそうだ → 遺言(公正証書遺言)
- 亡くなった後の手続きを頼める人がいない → 死後事務委任契約+遺言
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※どの方法をどう組み合わせるかは、ご家族の構成・財産の内容・ご本人の意向によって変わります。初回相談で具体的に整理します。
行政書士あおば行政法務事務所 齋藤光宏