本文へスキップ
あおば行政法務事務所

相続・遺言 / igon

公正証書遺言—公証役場での作成手順と費用

公正証書遺言の方式要件、証人の欠格事由、公証人手数料の算定、作成当日の流れを、横浜市の行政書士が実務目線で整理します。

#公正証書遺言#公証役場#証人#公証人手数料#民法969条#出張作成#口授#遺言

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言の代表的な方式です。方式不備のリスクが低く、意思能力の担保もあるため、当事務所でお作りする遺言の大半は公正証書です。このページは、方式要件・証人・手数料・作成当日の流れを整理します。

結論

  • 公正証書遺言は、証人2名以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授して作成します(民法第969条)。作成の手続は公証人法に従います。
  • 2025年10月1日から、公正証書は原則として電子データで作成されるようになりました。遺言者・証人は押印の代わりに電子サインで承認し、一定の条件のもとでウェブ会議による作成も認められています(公証人法第36条・第37条・第40条)。
  • 推定相続人・受遺者およびその配偶者・直系血族は証人になれません(民法第974条)。
  • 公証人手数料は、受益者ごとの目的価額から算出し、1億円以下は遺言加算13,000円が加わります。
  • 病床等での出張作成は手数料1.5倍+日当+交通費です。
  • うなづくだけでは口授と認められません(最判昭和51年1月16日)。

背景と制度の目的

公正証書遺言は、公証人という法律専門職が遺言者の意思を確認し、方式を整えて作成する点に最大の特徴があります。公証人は元裁判官・検察官等の法律実務家から任命される公務員で、作成した公正証書は公文書として高い証明力を持ちます。

公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、紛失・改ざんのリスクが極小です。家庭裁判所の検認も不要で、死後は正本・謄本を使って直ちに遺言執行が可能です。これらの利点から、紛争リスクのある案件や、判断能力に疑義のある高齢遺言者の場合、当事務所は公正証書遺言を一択で推奨しています。

方式要件(民法第969条・第969条の2)

2025年10月1日に施行された改正で、民法第969条は「証人2名以上の立会い」と「遺言者による口授」の2つを定め、筆記・読み聞かせ・署名などの作成手続は公証人法に委ねる形に改められました。

要件・手続 内容 根拠
証人2名以上の立会い 作成の間、証人が同時に立ち会う 民法第969条第1項第1号
遺言者による口授 遺言の趣旨を公証人に口頭で述べる 民法第969条第1項第2号
公証人による作成 原則は電子データ(電磁的記録)で作成。困難な事情がある場合は書面 公証人法第36条
内容の確認と承認 公証人が内容を読み聞かせ又は閲覧させ、遺言者・証人が承認 公証人法第40条
遺言者・証人の署名 署名又はこれに代わる措置(電子サイン等)。押印は不要 公証人法第40条

遺言者が署名できない場合の取扱いも公証人法に定めがあります。口がきけない方は、通訳人の通訳による申述または自書によって口授に代えることができます(民法第969条の2)。

ウェブ会議による作成

嘱託人(遺言者)から申出があり、公証人が相当と認めるときは、ウェブ会議を利用して公正証書を作成できます(公証人法第37条第2項)。証人だけがウェブ会議で立ち会う方法もあります(同法第31条)。ただし日本公証人連合会は、遺言や任意後見のように本人の意思確認が重要なものは「慎重に判断されることになります」としています。当事務所では、ご高齢の方の遺言は、原則として公証役場での対面または公証人の出張による作成をおすすめしています。

口授の実質

最判昭和51年1月16日は、遺言者が公証人の問いに対しうなづくのみで、遺言の内容を自らの言葉で口授したと認められない場合、公正証書遺言は無効とした事例です。事前に、遺言者がご自身の言葉で内容を説明できるかを面談で確認しておく必要があります。

証人の欠格事由(民法第974条)

以下の者は証人になれません。欠格者を証人とした公正証書遺言は方式違反で無効となります。

  • 未成年者
  • 推定相続人、受遺者、およびその配偶者・直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記・使用人

配偶者の範囲(最判平成9年9月11日)

「配偶者」には推定相続人の配偶者も含まれます。長男のお嫁さんを証人にしてしまうと無効になります。証人の欠格性は、戸籍レベルで系図を描いて確認することが実務上の必須工程です。

当事務所の証人手配

  1. 当事務所の行政書士2名(最も安全)
  2. 公証役場紹介(1名あたり6,000円〜11,000円程度、役場により異なる)
  3. 顧客手配(欠格性を当事務所で再確認)

補助者は証人に立てないため、当事務所では齋藤光宏+宮本(行政書士)の組み合わせで対応しています。

公証人手数料の算定(公証人手数料令、2025年10月改定対応)

基本算定式

(受益者ごとに目的価額を算出 → 手数料表を適用)の合計
+ 遺言加算(目的価額合計1億円以下なら 13,000円)
+ 枚数加算(原本3枚超の場合、超過分 × 300円/枚)
+ 正本・謄本交付手数料(電子: 各2,500円/紙: 300円 × 枚数)

目的価額区分表

目的価額 手数料
50万円以下 3,000円
50万円超〜100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 13,000円
500万円超〜1,000万円以下 20,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 26,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 33,000円
5,000万円超〜1億円以下 49,000円
1億円超〜3億円以下 49,000円+超過額5,000万円までごとに15,000円
3億円超〜10億円以下 109,000円+超過額5,000万円までごとに13,000円
10億円超 291,000円+超過額5,000万円までごとに9,000円

2025年10月1日施行の公証人手数料令改正後の金額です(公証人手数料令 別表)。

出張作成の加算

病床等での執務は、手数料が1.5倍になります(遺言加算は加算の計算に含めません)。日当は1日2万円(4時間以内なら1万円)、交通費は実費です。入院中・自宅療養中の遺言者には、公証人の出張を手配します。

受任から作成当日までの実務フロー

  1. 初回面談と受任。ヒアリングシートで家族関係・財産概要・意思を確認
  2. 相続人調査(戸籍収集)、財産調査(登記・評価・残高)
  3. 遺言原案の起草
  4. 公証役場へ事前連絡(電話予約、メールで原案・財産目録・戸籍・証人情報を送付)
  5. 公証人が案を整備し、メールで提示、修正往復
  6. 作成日調整(公証役場での作成または出張作成)
  7. 作成当日。遺言者の本人確認資料持参、口授・読み聞かせ・承認・署名(電子サイン)
  8. 正本・謄本の交付、手数料支払い

作成当日の持ち物

  • 遺言者の印鑑証明書(3か月以内)+実印、または顔写真付き身分証+認印
  • 証人2名の本人確認書類
  • 公証人手数料の現金または振込準備

典型条項の骨格

第1条(特定財産承継)
  遺言者は、下記不動産を長男○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。
    (不動産表示は登記事項証明書のとおり)

第2条(金融資産承継)
  遺言者は、下記預貯金債権を妻○○に相続させる。
    株式会社○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○

第3条(残余財産)
  遺言者は、上記各条項に記載した財産を除く一切の財産を妻○○に相続させる。

第4条(予備的条項)
  妻○○が遺言者の死亡以前に死亡した場合、第2条・第3条で妻に相続させるとした
  財産は長男○○に相続させる。

第5条(遺言執行者)
  遺言者は、本遺言の遺言執行者として行政書士 齋藤光宏を指定する。
  遺言執行者は本遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する。

付言事項
  (家族への感謝、配分の理由、遺留分請求を控えてほしい旨の希望等)

よくある誤解・不備

証人の欠格に気づかず無効になる

推定相続人の配偶者は欠格者です。系図を描いて証人候補の続柄を逐一確認します。

不動産の表示が登記と一致しない

「マンション○○」と通称で書いてしまい、登記事項証明書の正式表示とずれて登記不能になる事例があります。不動産は登記事項証明書の表示を一字一句コピーします。

預貯金を「全ての預貯金」とだけ記載

金融機関名・支店・口座番号まで特定しないと、金融機関が払戻に応じないことがあります。

予備的条項の欠如

受遺者が遺言者より先に死亡すると、その条項は失効します(最判平成23年2月22日)。必ず第二順位を定めておきます。

印鑑証明書が3か月超過

公証役場で受け付けられません。作成日が確定してから印鑑証明書を取得します。

業際の注意

原案作成と公証役場調整は行政書士の業務範囲です。公正証書そのものの作成権限は公証人にあり、行政書士はその手前までを担当します。紛争性のある案件(相続人間の対立が顕在化、遺言無効が主張されている等)は、原案段階から弁護士と共同対応します。

あおば事務所の対応

当事務所では、初回面談で方式の選択(公正証書・自筆証書)をご相談したうえで、公正証書をお選びの場合は財産調査から公証役場調整、作成当日の立会いまで一貫してお引き受けします。

横浜公証センター・川崎公証役場・東京都内の公証役場と日常的にやり取りしており、公証人ごとの文案の好みや、リモート対応の可否も含めて最短ルートで作成に進められます。証人2名は当事務所で手配し、作成後は遺言執行者として就任して死後の実現まで伴走します。

関連ページ

個別のご相談は無料でお受けします

記事の内容について、お客様の事業に即した個別の判断は、初回相談(無料)で直接ご案内します。

この記事を改善する(スタッフ用)

事実誤認・誤字脱字等、お気づきの点があればこちらから報告できます