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あおば行政法務事務所

任意後見契約(移行型) / 設計

親子で結ぶ任意後見契約—受任者の決め方・兄弟への配慮・予備の受任者

親が子を任意後見人にする契約で、ご相談の場で必ず確認している設計の論点をまとめました。子が複数いる場合の各自代理と共同代理、受任者に何かあったときの備え、受任者にならない兄弟姉妹への報告、報酬、銀行対応。2026年改正で導入される効力発生の順序の合意にも触れます。

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任意後見のご相談で最も多いのは、70〜80代の親御さんと50代前後のお子さまが一緒にいらっしゃるケースです。受任者(将来の任意後見人)にはお子さまがなることがほとんどで、手続きそのものは難しくありません。後々の安心を左右するのは、むしろ「家族の中でどう決めるか」です。このページでは、当事務所が原案を作る前に必ず確認している論点を整理します。

結論

  • お子さまが複数いる場合は、受任者を1人にするか複数にするかを先に決めます。複数にするなら、受任者ごとに別々の契約を結ぶ「各自代理」を基本にご提案しています。
  • 受任者に何かあったときに備え、2人目の受任者を用意しておく方法を検討します。
  • 受任者にならない兄弟姉妹にも報告書の写しが届く条項を入れると、使い込みの疑いや後の相続での不信感を防ぎやすくなります。
  • 報酬、報告の頻度、銀行での手続きの方法も、契約の段階で決めておきます。

1. 受任者を誰にするか

任意後見受任者に資格は要りません。ただし、未成年者、家庭裁判所で法定代理人・保佐人・補助人を解任された人、破産者、行方の知れない人、ご本人に対して訴訟をした人とその配偶者・直系血族、不正な行為などがあって任務に適しない人が受任者の場合、家庭裁判所は任意後見監督人を選任しません(任意後見契約に関する法律 第4条第1項第3号)。監督人が選ばれなければ契約は発効しないため、実質的にこうした人は受任者になれません。

お子さまを選ぶときは、次の点を話し合っていただきます。

  • ご本人の近くに住み、通院や施設とのやり取りに動けるか
  • 通帳の管理や記録を、長い期間きちんと続けられるか
  • 他の兄弟姉妹が納得できる人選か

2. 受任者を複数にするとき

方式 内容 利点 注意点
各自代理(別々の契約) 受任者ごとに別の契約を結び、それぞれが単独で動ける 1人に何かあっても、他の受任者の契約は影響を受けない 公証人手数料は契約の数だけかかる。受任者同士の情報共有が必要
各自代理(分担型) 財産管理は長男、身の回りの手続きは長女、のように分担する 得意分野と住まいの近さで役割を分けられる 分担の境目を代理権目録ではっきりさせる
共同代理 1つの契約で、受任者全員がそろって代理権を使う 相互チェックが最も強く働く 1人が欠けると契約全体が動かなくなる。意見が割れると事務が止まる

判断能力が衰えた後は、新しく任意後見契約を結ぶことはできません。そのため当事務所では、長い期間にわたって安定して機能する各自代理を基本にご提案しています。

3. 受任者に何かあったときの備え

受任者のお子さまが先に亡くなったり、病気で動けなくなったりすると、その契約は使えなくなります。現行制度では、2人目の受任者(たとえば孫や、もう1人のお子さま)とも任意後見契約を結んでおき、必要になった方の契約を発効させる方法を、公証人と相談しながら設計します。

2026年6月に成立した改正法(令和8年法律第45号)では、本人と複数の任意後見受任者との間で、契約の効力を生じさせる順序を合意できるしくみが設けられました。施行(公布から2年6か月以内)後は、「まず長男、長男が務められなければ次男」という設計が制度上もしやすくなります。

4. 受任者にならない兄弟姉妹への報告

移行型の場合、委任契約の期間は任意後見監督人がいません。受任者が親の通帳を預かって支払いをしていると、他の兄弟姉妹から「お金を勝手に使っているのでは」と疑われることがあります。実際に、親が亡くなった後の相続の場面で、受任者だった兄弟の管理をめぐって話がこじれる例は少なくありません。

原案には、次のような条項を入れます。

  • 受任者は、○か月ごとに、財産の管理状況と収支を書面で報告する
  • 報告書の写しを、ご本人が指定する家族(受任者にならない兄弟姉妹)にも送る
  • 報告書には、預貯金の残高の推移と主な入出金を記載する

報告の仕組みは、受任者であるお子さまを疑いから守るためのものでもあります。

5. 報酬を決めておく

お子さまが受任者になる場合も、報酬の有無と金額を契約で決めます。無報酬とするか、少額の報酬を定めるかは、ご家族で話し合っていただいた結論をそのまま条項にします。報酬を定める場合は、他の兄弟姉妹にもその内容を伝えておくことをおすすめしています。

任意後見が発効した後は、別に任意後見監督人の報酬がかかります。こちらは家庭裁判所が決め、ご本人の財産から支払います。

6. 銀行での手続きを事前に確かめる

委任契約の公正証書があっても、代理人による取引をどこまで受け付けるかは金融機関ごとに異なります。銀行所定の代理人届を別に求められることもあります。原案を作る段階で、ご本人のメインバンクの取扱いを確認しておくと、契約後に「銀行で使えなかった」という事態を避けられます。

7. 遺言とセットで考える

任意後見人になったお子さまは、親の財産の状況をいちばんよく知る立場になります。一方で、任意後見は親が亡くなった時点で終わり、財産の分け方は決められません。受任者のお子さまと他の兄弟姉妹との関係に配慮が必要なご家庭ほど、公正証書遺言を同じ時期に作っておくことをおすすめします。任意後見契約と同じ公証役場で、同じ日に作成することもできます。

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※ご家族の間で意見が対立している場合は、契約の前に弁護士への相談が必要になることがあります。その場合は連携する弁護士をご紹介します。

行政書士あおば行政法務事務所 齋藤光宏

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