建設業許可・経審・入札参加 / keishin
経営事項審査(経審)とは—公共工事入札への登竜門
経営事項審査の制度上の目的、公共工事入札の前提としての機能、総合評定値P点の構造、有効期間の設計を、横浜の行政書士が実務目線で整理します。
公共工事を元請として受注するには、経営事項審査(以下、経審)で発行される結果通知書が必要です。このページでは、経審がなぜ要るのか、P点とは何か、有効期間をどう設計するかを整理します。
結論
- 経審は、建設業法第27条の23に基づく公共工事の元請受注に向けた客観的な経営審査です。
- 審査は4段階(決算変更届→経営状況分析Y→経営規模等評価X1・X2・Z・W→総合評定値P)で進みます。
- 総合評定値P点の算式は P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W です。
- 有効期間は審査基準日から1年7か月。1日でも空けると公共工事の請負契約で失格になり得ます。
- 軽微な工事の範囲(建築一式で1,500万円未満等)を超えない自主施工なら経審は不要ですが、公共工事入札には結果通知書が不可欠です。
背景と制度の目的
経審は、公共工事の発注者が建設業者の経営実態を客観的に把握するために設けられた制度です。税金で発注する工事を、財務・技術・社会性の面で問題のない業者に委ねるための仕組みといえます。
発注者は全国に多数あり、すべての発注者が個別に業者審査を行うのは非効率です。そこで国・都道府県が建設業者を一元的に審査し、総合評定値P点という共通の指標を発行することで、各発注者がその結果を使って等級・格付を組める構造にしています。
根拠条文の要点
- 経営事項審査:建設業法第27条の23
- 審査項目・基準:同法第27条の23第3項に基づく国土交通大臣告示
- 事務取扱:経営事項審査の事務取扱について(平成20年国総建第309号)
条文・告示は改正が続きます。令和8年7月1日施行の改正では社会保険未加入の減点項目削除やCCUS加点の縮小など、評点構造の見直しが予定されています。
経審の4段階構造
| 段階 | 主体 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 決算変更届(事業年度終了届) | 許可行政庁 | 直前決算の財務諸表・工事経歴書等を届出。未提出だと経審不可 |
| ② 経営状況分析(Y) | 登録経営状況分析機関(CIIC等) | 財務諸表8指標から経営状況点数Yを算出、結果通知書を発行 |
| ③ 経営規模等評価(X1・X2・Z・W) | 許可行政庁 | 完成工事高・自己資本・技術職員・社会性等を審査 |
| ④ 総合評定値請求(P) | 許可行政庁 | ②③を合成してP点を算出し通知書を交付 |
②から④までは制度上、申請者の請求による任意の手続きです。しかし公共工事の入札参加資格では④の結果通知書が実質的に必須となるため、③と④は同時申請が通常の運用です。
総合評定値 P点の算式
P = 0.25 × X1 + 0.15 × X2 + 0.20 × Y + 0.25 × Z + 0.15 × W
| 項目 | 配点 | 業種別/共通 | 内容 |
|---|---|---|---|
| X1 | 25% | 業種別 | 年間平均完成工事高(工事種類別) |
| X2 | 15% | 会社共通 | 自己資本額点数と平均利益額点数の平均 |
| Y | 20% | 会社共通 | 経営状況分析(8指標) |
| Z | 25% | 業種別 | 技術職員数点数×0.8 + 年間平均元請完成工事高点数×0.2 |
| W | 15% | 会社共通 | 社会性等(W1〜W8の合計×10×175÷200) |
最大ウェイトはX1とZ(各25%)で、いずれも業種ごとに別計算です。したがって「どの業種で公共工事を取るか」を決めないとP点の最適化は難しいという特徴があります。Y・X2・Wは会社全体の指標なので、全社施策として組みます。
P点の最低点と減点
P点の計算上の最低点はマイナス18点とされています。社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金)の未加入は1項目あたりW1で−40点、1項目欠けるだけでP点が約52.5点下がる構造です。令和8年7月1日施行の改正でこの減点項目自体は削除が予定されていますが、社会保険は建設業許可・CCUS運用・労務管理の前提でもあるため、未加入の放置は現実的ではありません。
有効期間と審査基準日
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 審査基準日 | 原則として申請日の直前の事業年度終了日(決算日) |
| 有効期間 | 審査基準日から1年7か月 |
| 空白期間のリスク | 請負契約時点で有効な結果通知書が必要な発注者は失格となる |
3月31日決算なら、翌々年の10月31日までが有効期間です。毎年受審して結果通知書の連続性を作る運用が基本となります。1日でも空ければ入札機会の喪失に直結するため、年次カレンダーで管理します。
消費税・インボイスの前提
消費税課税事業者は税抜金額で申請します。インボイス登録事業者は自動的に課税事業者となり、税抜経理への移行が必要です。免税事業者のみ税込記載が許容されます。千円未満は切捨て、JVは出資比率で按分します。
税抜化により見かけ上の売上高が縮減するため、インボイス登録前後ではX1・Y点への連鎖影響を事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。
よくある誤解・不備
経審を受ければ公共工事が取れる
経審は客観点(P点)の原資にすぎません。発注者ごとの等級・格付は、P点に主観点を加算した総合評価で決まります。経審だけ強くても格付は伸びないのが実情です。
軽微な工事だから経審は不要
許可不要の軽微な工事の範囲でも、公共工事入札には経審結果通知書が必須です。建設業許可と経審の必要性は別のレイヤーで判断します。
自社の決算期を変えて短期で数字を整える
決算期変更で完成工事高は12か月換算に置き換わるため、見かけの数字操作では済みません。Y・X2への影響、有効期間の空白、自治体格付の締切などを合わせて判断する必要があります。
あおば事務所の対応
初回相談では、許可の現状・直近3期の完成工事高・技術職員の棚卸し・社会保険加入状況を伺い、現時点の仮P点をその場で概算します。続けて、公共工事で狙う業種と発注者を整理し、いつまでに何点を目標にするかを逆算で設計します。
開業24年の実務で、建設業許可から決算変更届、経審、入札参加資格申請まで一連の流れを経験してきました。税理士・社労士・司法書士との連携が必要になる局面もご案内します。