建設業許可・経審・入札参加 / keishin
経審のY点—経営状況分析の指標と改善策
経営事項審査のY点(経営状況分析)について、8指標の内訳、改善施策の優先順位、令和7年改正で導入された資本性借入金の取扱いを、横浜の行政書士が整理します。
経審のY点(経営状況分析)は、会社全体の財務健全性を8つの指標で評価する項目です。税務申告後の数字が固まる段階で指標が確定するため、決算期をまたいだ計画的な改善が成果につながります。このページでは、算式と8指標、改善施策の優先順位を整理します。
結論
- Y点の配点はP点の20%で、会社共通の指標です。
- 算式は Y = 167.3 × A + 583。Aは8指標から算出される経営状況点数です。
- 指標の核は、y1純支払利息比率、y2負債回転期間、y4売上高経常利益率、y6自己資本比率、y7営業キャッシュフローです。
- 短期で効きやすいのは、借入圧縮・売掛金回収・粗利改善の組み合わせです。
- 令和7年3月31日以降の審査基準日では、条件付きで資本性借入金を自己資本相当として扱えます。
背景と制度の目的
Y点は、発注者にとって「この会社が財務的に持続可能か」を判断する材料です。建設業特有の受注リスク(代金回収サイトの長さ、未成工事支出金の滞留、資材価格の変動)を踏まえ、利益率だけでなくキャッシュフローや自己資本比率まで含めた総合評価で組み立てられています。
分析は、国土交通大臣が登録する経営状況分析機関が行います。全国で10社程度、地域差はなく全国どの機関でも選択可能です。
Y点の算式
Y = 167.3 × A + 583
Aは8指標から計算される「経営状況点数」です。計算には専用の回帰式が用いられ、財務数値のバランスが点数に反映されます。算式の係数は改正により変更される可能性があるため、実案件では最新の手引きを確認します。
8指標の内訳
| 指標 | 定義 | 算式の骨子 | 良い方向 |
|---|---|---|---|
| y1 純支払利息比率 | 売上高に対する実質金利負担 | (支払利息−受取利息配当金)÷売上高×100 | 低い |
| y2 負債回転期間 | 負債を月商で何か月分抱えるか | 負債合計÷(売上高÷12) | 低い |
| y3 総資本売上総利益率 | 資本効率性 | 売上総利益÷総資本平均×100 | 高い |
| y4 売上高経常利益率 | 本業+財務の収益性 | 経常利益÷売上高×100 | 高い |
| y5 自己資本対固定資産比率 | 固定資産の自己資金カバー率 | 自己資本÷固定資産×100 | 高い |
| y6 自己資本比率 | 財務健全性 | 自己資本÷総資本×100 | 高い |
| y7 営業キャッシュフロー(絶対額) | 現金創出力 | 営業CF(2期平均)÷1億円 | 高い |
| y8 利益剰余金(絶対額) | 内部留保 | 利益剰余金÷1億円 | 高い |
改善施策の優先順位
現場での着手順としては、短期で効きやすい項目から順に打つのが基本です。
| 優先度 | 指標 | 実務施策 |
|---|---|---|
| 高 | y1 純支払利息比率 | 高利借入の借換え、一部繰上返済、遊休資金の有効活用 |
| 高 | y2 負債回転期間 | 借入圧縮、長期未払金の整理、売上増で分母を増やす |
| 高 | y4 売上高経常利益率 | 値引抑制、粗利管理、販管費の圧縮、借入利息の低減 |
| 高 | y6 自己資本比率 | 増資、利益留保、短期借入の返済、債務圧縮 |
| 高 | y7 営業CF | 売掛金回収、未成工事支出金の圧縮、仕入条件改善、前受金の確保 |
| 中 | y3 総資本売上総利益率 | 不採算工事の見直し、外注比率の適正化、施工効率化 |
| 中 | y8 利益剰余金 | 安定黒字化、配当抑制、役員報酬設計 |
| 低 | y5 自己資本対固定資産比率 | 固定資産圧縮、増資、遊休資産整理(時間を要する) |
節税偏重の決算調整は、y4・y7・y8を下げる方向に動きます。経審を意識するなら、税理士と「どこまで利益を出すか」の方針をすり合わせる必要があります。
改善シミュレーション例
年商6億円規模の会社を想定した試算例です。
| シナリオ | y1 | y2 | y4 | y6 | y7 | y8 | 推計Y |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 現状 | 1.0% | 10.0か月 | 0.5% | 16.7% | 0.05 | 0.20 | 559 |
| 借入圧縮のみ | 0.7% | 7.8か月 | 0.5% | 20.0% | 0.05 | 0.20 | 606 |
| 収益改善のみ | 1.0% | 10.0か月 | 2.5% | 16.7% | 0.15 | 0.35 | 597 |
| 増資・資本改善のみ | 1.0% | 10.0か月 | 0.5% | 30.0% | 0.05 | 0.60 | 590 |
| 複合改善 | 0.5% | 7.2か月 | 2.5% | 32.1% | 0.20 | 0.50 | 695 |
単独施策よりも複合施策のほうが効きやすいという結果になります。借入圧縮と回収改善(y1・y2)の即効性が高い傾向です。
登録経営状況分析機関
国土交通省が登録する経営状況分析機関は全国で10社程度です。地域に縛られず、どの機関でも選択できます。
- 建設業情報管理センター(CIIC):最大手。合併・分割・会社更生・大臣認定企業集団・持株会社・親会社企業集団・海外子会社等の特殊経審取扱い通達を多数公表
- ワイズ公共データシステム:中堅
- 経営状況分析センター:中堅
- その他の7社程度
手数料は機関により異なり、数千円から1万円台です。処理期間は1〜3週間が目安となります。
令和7年改正:資本性借入金の取扱い
令和7年3月31日以降の審査基準日、単独決算限定で、資本性借入金を自己資本相当として扱えるようになりました。要件は以下です。
- 金融機関発行の「資本性借入金該当証明書」があること
- 単独決算で申請すること
y6自己資本比率、X2(自己資本額点)の両方にプラスに効きます。実務では、メインバンクとの調整(通常の借入を資本性に組み替えるリスケ交渉)が前提です。連結決算での扱いは現状限定的で、案件ごとに確認が必要です。
インボイス制度の影響
免税事業者が期中にインボイス登録すると、登録以降の売上高が税抜記載となり、見かけ上の売上高が縮減します。分子・分母に売上高がある指標(y1・y2・y3・y4)に連鎖影響が出て、Y点が下がる方向に動く可能性があります。登録前後での事前シミュレーションをおすすめします。
よくある不備
- 決算変更届と財務諸表の数値不一致(税抜・税込の混在、建設業会計への組替漏れ)
- 役員貸付金・仮払金の未整理(y6・y8を圧迫)
- 完成工事未収入金の滞留(y2・y7を悪化)
- 減価償却を計上していない(税務は任意でも経審では実施額で計算されるため、原則計上が前提)
- 資本性借入金該当証明書の金融機関様式の不整合
他士業との業務境界
財務諸表作成・税務申告・建設業会計組替は税理士、増資・DESの登記は司法書士、金融機関との資本性借入金交渉は経営者と税理士が主となります。行政書士は経審観点でのシミュレーションと申請代理を担当します。
あおば事務所の対応
Y点の改善は、数字が固まる決算3〜6か月前からの仕込みが成果を左右します。直近3期の財務諸表を拝見し、y1〜y8のどこがボトルネックかを見える化したうえで、税理士・金融機関との役割分担を整理します。
資本性借入金、DES、増資といった資本施策は、建設業許可・経審・登記・税務が連動します。関係士業をまたぐ調整の窓口として、あおば事務所をご活用ください。