建設業許可・経審・入札参加 / keishin
経審のX1・X2点—完成工事高と自己資本額
経営事項審査の経営規模を示すX1(年間平均完成工事高)とX2(自己資本額・平均利益額)の算定、2年平均と3年平均の選択、業種間振替の考え方を、横浜の行政書士が整理します。
経審のP点のうち、X1(完成工事高)とX2(自己資本額・平均利益額)は合計40%の配点を占めます。このページでは、この2項目の算定方法と、2年平均と3年平均の選び方、業種間振替の実務を整理します。
結論
- X1は年間平均完成工事高の点数で、配点はP点の25%(業種別計算)です。
- X2は自己資本額点数と平均利益額点数の平均で、配点は15%(会社共通)です。
- X1は2年平均と3年平均の選択ができ、直近の売上動向で有利な方を選びます。
- X2の平均利益額は**EBITDA(利払前税引前償却前利益)**の2期平均で評価されます。
- 業種間振替(積み上げ)は有効な戦略ですが、積み上げ元業種はZ点の対象外となるトレードオフがあります。
背景と制度の目的
経営規模の評価は、会社の受注実績の大きさと財務基盤の厚さという2つの面から組み立てられています。X1は業種ごとの受注規模を、X2は会社全体の財務体力を示す指標です。
X1・Zは業種別に計算されるため、経審で公共工事を狙う業種を明確にしないと最適化できません。Y・X2・Wは会社全体の性格を持つため、全社施策として組み立てます。
X1:完成工事高点
算式と選択肢
- 業種ごとに公式テーブルを適用して点数化します。
- 原則、2年平均または3年平均を申請者が任意で選択できます。
- 同じ選択が元請完成工事高(Z2)にも適用されます。
- 点数テーブルは単調増加で、平均額が高いほど点数が上がります。
2年平均と3年平均の選び方
| ケース | 前々期 | 前期 | 当期 | 2年平均 | 3年平均 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 回復局面 | 40,000 | 80,000 | 160,000 | 120,000 | 93,333 | 2年平均 |
| 一時落込み | 180,000 | 120,000 | 60,000 | 90,000 | 120,000 | 3年平均 |
| 大型案件偏重 | 20,000 | 20,000 | 150,000 | 85,000 | 63,333 | 2年平均 |
| 安定横ばい | 100,000 | 105,000 | 95,000 | 100,000 | 100,000 | ほぼ同等 |
(単位:千円)
原則は、直近で回復・拡大しているなら2年平均、直近だけ落ち込んだなら3年平均です。ただし、この選択は申請する全業種に一律適用されるため、主力業種Aでは2年が有利でも次点業種Bでは3年が有利というケースが出ます。会社全体のP点で最適化する視点が必要です。
業種間振替(積み上げ)
関連する業種間で完成工事高を集約できる仕組みです。付帯工事の概念を活用して、主力業種に数字を寄せます。ただし、積み上げ元の業種は経営規模等評価の対象外となり、技術職員名簿の業種コードにも載せられません。つまり、積み上げ元のP点を捨てて積み上げ先に集約する判断です。
この選択は、工事請負契約書・工事内訳書による工事内容の疎明が前提になります。実態と異なる振替は補正や取り消しのリスクがあるため、慎重に設計します。
会計・証憑面のポイント
| 論点 | 原則 |
|---|---|
| 経理 | 税抜(免税事業者のみ税込) |
| 単位 | 千円未満切捨て |
| JV | 出資比率で按分。協定書添付が必須 |
| 契約書 | 請負金額順の上位3件(先頭3件ではない) |
| 改修・補修工事 | 内訳書・見積書の追加で業種疎明 |
| 委託・兼業売上 | 完成工事高に含めない |
| 保守点検・埋蔵文化財発掘調査 | 建設工事に当たらず含めてはいけない |
X2:経営規模(自己資本額・平均利益額)
算式
X2 = (X21 + X22) ÷ 2(小数点以下切捨て)
- X21:自己資本額点数
- X22:平均利益額点数
X21:自己資本額点
貸借対照表の純資産合計を使います。審査基準日の単年度または2年平均(直前審査基準日との平均)を選択可能です。改善策は、過度な社外流出(配当・役員報酬)を控えて利益を内部留保することです。
X22:平均利益額点
利払前税引前償却前利益(EBITDA)の2期平均で算出します。算式は営業利益+減価償却実施額です。借入利息や減価償却ペースの差異を排除することで、本業のキャッシュ創出力を評価する設計になっています。
改善策は、本業の粗利率改善・販管費削減(営業利益を増やす)に加え、設備投資による減価償却費の計上も経審上プラスに働きます。一方、短期借入の利息は営業利益に含まれないため、借入圧縮はX22には直接効きません(Y・X21には効きます)。
X2 の戦略
X2の配点はP点の15%でX1・Zより小さいですが、会社共通の指標としてYと並ぶ性格を持ちます。自己資本を厚くする施策(利益留保・増資・資本性借入金への転換)は、X21とY(y6自己資本比率)の両方に効くため、費用対効果が高い施策です。
消費税・インボイスの影響
消費税課税事業者は税抜金額で申請が必須です。インボイス登録事業者は自動的に課税事業者となり、税抜経理に移行します。
税抜移行により見かけ上の売上高が縮減するため、X1が下がる方向に動きます。Y点の指標(y1・y2・y3・y4)にも連鎖影響があります。インボイス登録前後で事前シミュレーションを行っておきます。
決算期変更とX1の年額換算
決算期を12か月未満に変更した場合、完成工事高は**12か月換算(年率換算)**で評価されます。
たとえば、3月31日決算を9月30日に変更した6か月決算で、
- 6か月決算の完成工事高 300,000千円
- 前審査対象事業年度の完成工事高 480,000千円
の場合、年額換算後の完成工事高 = 300,000 + 480,000 × 6 ÷ 12 = 540,000千円となります。元請完成工事高(Z2)も同様に按分されます。
繁忙期を含む半期の数字が強い会社にはX1・Z2でメリットがありますが、Y・X2は財務実態次第で逆方向に動き得ます。完工高だけで決算期変更を判断せず、4表(完工高換算/Y試算/経審有効期間/自治体格付)を揃えて比較することが肝心です。
よくある不備
- 業種判定の誤り(土木一式に外構・土留混入、機械器具設置に自動ドア混入、解体に工作物以外の混入等)
- 税抜と税込の混在
- 千円未満の処理誤り
- 上位3件が請負金額順ではなく先頭3件
- 改修・補修工事の内訳書・見積書なし
- JV協定書の欠落
- 委託・兼業売上の混入
- 兼業事業年度報告書の未作成(兼業売上がある場合)
- 資本性借入金の取扱いをX2とYで食い違わせる
他士業との業務境界
建設業会計への組替えや税抜処理、決算期変更に伴う税務判断は税理士の領域です。定款変更の登記は司法書士、DES(デット・エクイティ・スワップ)は司法書士と税理士の領域です。X1・X2のシミュレーションと業種判定、経審申請代理は行政書士の業務です。
あおば事務所の対応
ご相談では、直近3期の工事経歴と財務諸表を拝見し、2年平均と3年平均の両方でP点を試算してから比較します。主力業種の絞り込み、業種間振替の可否、元請比率の引き上げ余地まで、具体的な数字で検討します。
決算期変更を提案する場合は、完工高換算・Y試算・有効期間・自治体格付の4表比較で意思決定材料をそろえます。顧問税理士との連携も含めて、窓口はあおば事務所で一本化できます。