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あおば行政法務事務所

相続・遺言 / zeimu

相続と税務の連携—準確定申告・相続税・事業承継税制

相続税の基礎控除・配偶者軽減・小規模宅地等の特例、準確定申告(4か月)、相続税申告(10か月)、令和9年9月期限の法人版事業承継税制を、税理士連携の観点から整理します。

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相続税は、基礎控除を超えるかどうかの見極めと、特例適用の判断が鍵になります。行政書士は税務の独占業務に踏み込めない立場ですが、財産目録と概算対比で「税理士にお繋ぎすべき案件かどうか」を適切に判断する役割を担います。このページは、相続税の概要、税理士紹介のタイミング、事業承継税制の期限管理を整理します。

結論

  • 相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」です。これを超える見込みなら税理士にお繋ぎします。
  • 申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内で、遺産分割が未了でも期限は延びません。
  • 配偶者軽減や小規模宅地等の特例は、納税額がゼロでも申告が必要です。
  • 準確定申告は4か月以内で、税理士の領域です。
  • 法人版事業承継税制の特例承継計画は、令和9年(2027年)9月30日までの提出が実務期限です。

行政書士の立ち位置(税理士法第52条)

税理士独占業務

税理士法第52条により、以下は税理士の独占業務です。

  • 税務代理
  • 税務書類の作成
  • 税務相談

行政書士ができること・できないこと

行為 可否
相続税の一般的な情報提供(基礎控除・申告期限・配偶者軽減等)
財産目録から基礎控除との対比で概算を示す
「相続税が発生する可能性がある」と案内
税理士への紹介
具体的な税額計算 不可
「この分割方法なら節税できる」との助言 不可
相続税申告書の作成・提出代理 不可
準確定申告書の作成 不可
税務署への対応 不可

「税金がかかる」「申告期限は10か月」という一般情報の提供は可、「あなたの場合の税額はこれ」「こう申告すれば節税できる」は不可、が境界です。

相続税の基礎控除

計算式

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人の数には特殊ルールがあります。養子は原則として、実子なしなら2人まで、実子ありなら1人まで算入します。相続放棄があっても、放棄しなかったものとして数えます。

例示

法定相続人 基礎控除
配偶者のみ 3,600万円
配偶者+子1人 4,200万円
配偶者+子2人 4,800万円
配偶者+子3人 5,400万円

課税価格の目安

課税価格 = 正味の遺産額(プラス財産-債務・葬式費用)+ 生前贈与加算(一定期間)

基礎控除を超えれば相続税の申告が必要になります。超えなければ原則として申告不要ですが、特例適用の関係で申告が必要な場合があります(後述)。

申告期限

  • 相続開始を知った日の翌日から10か月以内
  • 金銭一括納付が原則、困難なら延納・物納
  • 期限後申告は加算税・延滞税の対象
  • 遺産分割が未了でも10か月は延びません

未分割申告

遺産分割が期限までにまとまらなくても、法定相続分等でいったん未分割申告を行い、後日分割成立後に修正申告または更正の請求で調整します。ただし、未分割のままでは配偶者軽減や小規模宅地等の特例が使えない形になりやすい点に注意が必要です。

納税額ゼロでも申告が必要な特例

「税額ゼロなら申告不要」は誤解です。以下の特例は、申告書の提出が適用要件になっています。

配偶者の税額軽減(相続税法第19条の2)

配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか大きい金額までは非課税になります。軽減適用で納付税額がゼロ円でも申告が必要です。

小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)

一定要件を満たす事業用・居住用宅地の評価額を最大80%減額する制度です。

宅地 減額割合 限度面積
特定居住用宅地 80% 330㎡
特定事業用宅地 80% 400㎡
貸付事業用宅地 50% 200㎡

適用には申告書の提出が必要です。未分割では原則として使えません(申告期限後3年以内の分割で使えるケースあり)。

行政書士の注意喚起ポイント

最終的な納税額がゼロ円でも、特定の税務特例を適用するためには期限内の申告が絶対条件になります。依頼者の方が「税額ゼロなら申告不要」と自己判断して無申告加算税の対象になる事態を防ぐため、不動産の存在や特例適用の可能性を察知した段階で、税理士への紹介を行います。

税理士紹介のタイミング

トリガー タイミング
総資産が基礎控除を超えそう 財産目録の初版ができた時点
配偶者軽減・小規模宅地等の特例を使いたい 遺産分割方針を決める前
生前贈与・相続時精算課税の履歴がある 初回ヒアリング直後
非上場株式・事業用資産がある 戸籍収集と並行
事業承継税制の利用可能性がある 会社資料収集直後

初回面談では、固定資産税納税通知書・預貯金の概算・生命保険金・生前贈与の有無を伺い、基礎控除との対比で紹介の要否を判断します。

生前贈与加算(令和6年改正)

  • 令和6年1月1日以降の贈与:相続開始前7年以内の贈与が加算対象(経過措置あり)
  • 令和5年12月31日以前の贈与:従来どおり3年以内

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、2,500万円までの特別控除があります。令和6年以降は年110万円の基礎控除が追加されました。制度適用の有無は、税理士にご確認ください。

準確定申告

必要な場合

被相続人が年金以外の所得(事業所得・不動産所得・給与所得等)がある、医療費控除の対象となる支払がある、源泉徴収されていて還付を受けたい、譲渡所得がある、といった場合に必要になります。

期限

相続開始を知った日の翌日から4か月以内(所得税法)

担当

税理士の領域です。行政書士は「必要性のご案内」と「税理士紹介」にとどめます。

提出先・提出義務者

  • 提出先:被相続人の死亡時の住所地の税務署
  • 提出義務者:相続人全員(連署)

事業承継税制

法人版事業承継税制(特例措置)

項目 期限
特例承継計画の提出 令和9年(2027年)9月30日まで
承継実施 令和9年(2027年)12月31日まで

個人版事業承継税制

項目 期限
計画の提出 令和10年(2028年)9月30日まで
承継実施 令和10年(2028年)12月31日まで

制度概要

非上場株式・個人事業用資産の相続税・贈与税の納税猶予・免除を受けられる制度です。認定経営革新等支援機関の関与が必要です。2026年4月時点は、特例承継計画の提出期限が令和9年9月30日と迫っており、前倒し設計が必要な時期です。対象となる案件では、早期に税理士と認定支援機関との連携を開始します。

行政書士の実務的役割

税理士紹介前に行政書士が担当できる範囲

  • 財産目録の叩き台作成
  • 通帳・残高証明・固定資産資料・非上場株式関係書類の束ね
  • 分割案のオプション整理(中立的な事実提示)

税理士がゼロから始めると時間を失いやすい部分です。当事務所で下地を作ってから税理士にお繋ぎすることで、10か月期限の中で無理のないスケジュールを組めます。

税理士に明確にお渡しする業務

  • 申告要否の最終判断
  • 財産評価(路線価・小規模宅地等の特例判定・非上場株式評価)
  • 申告書の作成
  • 具体的な税務相談

業際の注意

  • 具体的な税額計算:税理士の独占業務です。
  • 「この分割方法なら節税できる」という助言:税理士の領域です。当事務所は中立的な事実提示までとします。
  • 申告書の作成・税務署への対応:税理士の独占業務です。
  • 小規模宅地等の特例適用可否の断定:税理士の領域です。

「節税のために○○さんが多く取った方がよい」というような助言は、税理士法違反のリスクがあります。当事務所では、制度の一般的なご説明までで、具体的な判断は税理士にお繋ぎする運用を徹底しています。

相続税計算の例

ケース1:配偶者+子2人、財産4,000万円(すべて預貯金)

基礎控除 4,800万円 > 財産 4,000万円 で、相続税の申告は不要です。行政書士主導で完結する典型的なケースです。

ケース2:配偶者+子2人、自宅3,000万円+預貯金2,500万円

概算5,500万円 > 基礎控除4,800万円 で、相続税の申告が必要です。財産目録の初版段階で税理士をご紹介し、路線価や固定資産評価額による詳細評価、配偶者軽減や小規模宅地等の特例の適用で最終的な税額を税理士が計算します。税額がゼロになっても申告は必須です。

ケース3:事業承継(会社経営者・非上場株式)

税理士による株式評価と、認定経営革新等支援機関との連携で、事業承継税制の適用可能性を検討します。司法書士による役員変更登記(2週間以内)と、紛争予防の観点で弁護士との連携も並行します。

よくある不備

  • 「税額ゼロなら申告不要」と依頼者が自己判断→配偶者軽減・小規模宅地等の特例を使えずに過大納税
  • 10か月期限を意識せず、未分割のまま進行
  • 準確定申告(4か月)を忘れる
  • 生前贈与加算の期間を誤認(令和6年以降は7年)
  • 生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人数)を適用せず計算
  • 事業承継税制の計画提出期限(令和9年9月30日)を意識せず進行
  • 行政書士が「節税のために○○さんが多く取った方がいい」と助言→税理士法違反リスク

あおば事務所の進め方

当事務所では、初回面談で財産の概要を伺い、基礎控除との対比で税理士紹介の要否を判断します。不動産がある案件、生前贈与の履歴がある案件、事業用資産を含む案件は、財産目録の初版段階で税理士をご紹介し、合同で工程を組みます。準確定申告が必要な被相続人だった場合は、4か月期限を依頼者の方にお伝えし、税理士の初期対応を急ぎます。事業承継案件は、令和9年9月期限の法人版事業承継税制を念頭に、税理士・認定経営革新等支援機関との連携を最初から組み込みます。

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