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あおば行政法務事務所

相続・遺言 / hani

相続手続きにおける行政書士の業務範囲—弁護士・司法書士との業際

相続手続きで行政書士ができること・できないことを、弁護士法72条・司法書士法3条・税理士法52条の条文に沿って整理します。業際の境界と連携の段取りを、横浜市の行政書士が実務目線でご説明します。

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相続手続きをどこに頼めばよいのか、という入り口のご質問が年々増えています。相続は戸籍・財産・登記・税務・交渉が一つの案件に束ねて押し寄せる手続きで、一つの専門家だけでは完結しないのが通常です。このページは、どの作業を行政書士にご依頼いただけるのか、どの場面で弁護士・司法書士・税理士へ橋渡しが必要になるのかを、条文ベースで整理します。

結論

  • 行政書士は、相続人調査・戸籍収集・財産目録・遺産分割協議書の作成といった「書類作成」を担います。
  • 相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人間の交渉・調停・訴訟は弁護士の領域です。
  • 紛争の兆しが出た段階で、行政書士は業務を停止して弁護士に引き継ぎます。
  • 当事務所は受任時に「受任範囲」「紛争化時の切替」「除外業務」の3点を文書化し、業際違反を起こさない契約設計で受任します。
  • 不動産があれば初回面談の時点で司法書士、基礎控除を超える見込みであれば財産目録の初版段階で税理士に接続します。

背景—相続手続きで士業が分かれている理由

相続の手続きは、戸籍・協議書・登記・税務申告・紛争解決という性質の異なる作業が重なります。法律は、どの作業をどの資格者が担うかを以下のように区分しています。

  • 行政書士法第1条の2:官公署に提出する書類、権利義務・事実証明に関する書類の作成
  • 弁護士法第72条:法律事件に関する鑑定・代理・和解等の法律事務は弁護士の独占
  • 司法書士法第3条:登記・供託の申請代理、法務局・裁判所に提出する書類の作成
  • 税理士法第52条:税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の独占
  • 土地家屋調査士法第3条:不動産の表示に関する登記(表題登記)・測量

条文の相互関係を図にすると、相続手続きは「書類作成」「交渉」「登記」「税務」「測量」に分解されます。行政書士が担当するのは、主に書類作成と、書類の前提となる事実調査です。

行政書士が対応する業務

実務上、当事務所が相続案件で担当する主な業務は以下のとおりです。いずれも「書類作成」と「事実調査」に根拠を持ちます。

  • 相続人調査(戸籍・除籍・改製原戸籍の収集)
  • 相続関係説明図の作成
  • 法定相続情報一覧図の作成・法務局への申出
  • 相続財産の調査と財産目録の作成
  • 遺産分割協議書の作成(紛争がないことが前提)
  • 金融機関・証券会社への提出書類の整理と預貯金解約支援
  • 自動車の相続移転登録(運輸支局)
  • 農地相続届(農地法第3条の3、市町村農業委員会)
  • 生命保険契約照会制度の利用支援
  • 遺言書の作成支援(生前段階)

相続人間に争いがなく、書類を整えて各機関へ提出していけば完結する案件は、多くの場合行政書士だけで回せます。

行政書士では対応できない業務

以下は他士業の独占業務に該当するため、行政書士がお受けすることはできません。

業務 担当 根拠
不動産の相続登記の申請代理 司法書士 司法書士法第3条
家庭裁判所への申述書・申立書の作成 司法書士(書類作成) 司法書士法第3条
相続税・準確定申告 税理士 税理士法第52条
相続税の税額計算・具体的な節税助言 税理士 税理士法第52条
相続人間の交渉・調停・審判の代理 弁護士 弁護士法第72条
遺留分侵害額請求の交渉 弁護士 弁護士法第72条
未登記建物の表題登記・境界確定測量 土地家屋調査士 土地家屋調査士法第3条
遺族年金の請求 社会保険労務士 社会保険労務士法

これらを行政書士が引き受けるとそれぞれの士業法違反となり、懲戒処分・罰則の対象になります。当事務所では、該当業務が必要になった時点で、連携する司法書士・税理士・弁護士へ個別にお繋ぎします。

紛争性の見極め—弁護士連携の判断基準

相続実務で最も事故が起きやすいのは、「最初は書類作成案件だったのに、途中から交渉案件に変わる」場面です。以下の兆候が見えたら、行政書士は業務を止めて弁護士へ引き継ぎます。

  • 相続人の一部が押印を拒否している
  • 特別受益・寄与分・使途不明金の主張が出ている
  • 感情的な対立で協議が進まない
  • 遺留分侵害の可能性があり、受遺者と遺留分権利者が別行動を取っている
  • 遺言の無効主張が出ている
  • 相続人の一部がすでに弁護士を立てている

これらの兆候は、初回面談だけでは見えないことも多くあります。受任後も定期的に状況を確認し、兆候が見えた段階で速やかに連携先を手配します。

3点文書化ルール—業際違反を防ぐ契約設計

当事務所では、相続業務をお受けする際、委任契約書・見積書・ご説明メモに以下の3点を明記しています。この運用は、依頼者の方にとっても「どこまでお任せできるのか」が明確になるためにあります。

  • 受任範囲の限定:相続人調査、戸籍収集、一覧図の申出、協議書案の作成、関係機関との連絡調整に限る。交渉・代理は含まない。
  • 紛争化時の切替:相続人間に争いが生じた場合、当事務所は業務の全部または一部を停止し、資料を整理して依頼者へ引き渡す。
  • 除外業務:不動産登記申請代理、税務申告・税務相談、紛争性を有する交渉、家庭裁判所での代理、訴訟対応は本契約に含まれない。

この3点を文書化する目的は、業務範囲の取り違いによる依頼者の不利益を防ぐことです。「相続登記もまとめてお願いします」とご依頼いただく場合、当事務所ではその場で司法書士をご紹介し、費用と役割分担をご説明した上で進めます。

連携のタイミング—早い段階での橋渡し

司法書士を同日にご紹介する場面

  • 相続財産に不動産が1筆でもある
  • 令和6年4月施行の相続登記義務化(3年以内)が近い
  • 家庭裁判所への相続放棄申述書・不在者財産管理人選任申立書が必要
  • 事業承継に伴う役員変更登記(事由発生から2週間以内)が必要

税理士をご紹介する場面

  • 相続財産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える見込み
  • 配偶者軽減・小規模宅地等の特例の適用を検討したい
  • 生前贈与・相続時精算課税の履歴がある
  • 非上場株式・事業用資産を含む案件
  • 準確定申告(4か月以内)が必要な被相続人だった

弁護士をご紹介する場面

  • 上記「紛争性の見極め」で挙げた兆候が出た
  • 遺産分割調停・審判への移行が見込まれる
  • 渉外相続(外国籍相続人、準拠法争点)

よくある誤解

  • 「相続は一人の先生に全部まとめて頼むのが効率的」:制度上、一つの資格者で全業務を完結することはできません。むしろ役割分担が明確な事務所の方が、期限管理と費用の透明性が高くなります。窓口を一本化したうえで、各専門領域は連携でカバーする形が現実的です。
  • 「行政書士でも相続登記はできる」:できません。相続登記の申請代理は司法書士の独占業務です。
  • 「相続税の節税アドバイスも一緒にお願いしたい」:具体的な税額計算・節税助言は税理士の独占業務です。当事務所では基礎控除との概算対比までをご案内し、具体的判断は提携税理士へお繋ぎします。

あおば事務所の進め方

当事務所では、相続のご相談をお受けした初回面談で、財産・相続人・紛争の有無を伺い、必要な連携先を洗い出します。3点文書化ルールに沿った委任契約書で受任範囲を明確にし、司法書士・税理士・弁護士との橋渡しを工程に組み込みます。「書類作成で完結する部分」と「他士業にお繋ぎする部分」を最初にお示しすることで、ご依頼者様が後から費用や役割で戸惑わない進め方を大切にしています。

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