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あおば行政法務事務所

相続・遺言 / naniji

難事例への対応—認知症・行方不明・外国籍相続人

認知症・行方不明・外国籍の相続人がいる難事例の対応フローを、成年後見・不在者財産管理人・失踪宣告・署名証明・準拠法の観点から整理します。横浜市の行政書士が他士業連携の段取りを実務目線でご説明します。

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相続人の中に認知症の方・行方不明の方・外国籍の方がいる案件は、通常の相続手続きの流れには乗りません。先に書類を作ってしまうと、後で協議が無効になったり、金融機関が受理しなかったりします。このページは、難事例の類型別に対応フローを整理し、どの段階で他士業へお繋ぎするのかをお示しします。

結論

  • 認知症・行方不明・外国籍の相続人がいる案件は、先に協議書を作らない、が鉄則です。
  • 認知症の方は判断能力の類型(後見・保佐・補助)を確認し、家庭裁判所への申立て(司法書士・弁護士連携)を経てから協議に進みます。
  • 行方不明の方は、不在者財産管理人選任または失踪宣告(7年以上生死不明)で対応します。
  • 外国籍の相続人は、在外公館の署名証明・住所証明と、法定相続情報一覧図が使えないことに注意します。
  • 当事務所は、基礎資料の整理・家系図の作成・他士業への引継ぎ資料の作成を担当します。

難事例の類型別まとめ

相続人調査の段階で以下の類型が見つかったら、すぐに対応方針を決めます。

[相続人調査で障害発見]
   │
   ▼
  どの類型か
   │
   ├─ 認知症・判断能力低下 → 成年後見・保佐・補助
   ├─ 行方不明 → 不在者財産管理人 or 失踪宣告
   ├─ 非嫡出子・認知 → 戸籍の認知記載再点検
   ├─ 養子・代襲 → 普通養子/特別養子・代襲範囲確認
   ├─ 外国籍・海外居住 → 署名証明・住所証明・翻訳
   └─ 未成年者 → 親権者(特別代理人の要否)

認知症の相続人

成年後見制度の類型

類型 対象 同意権・取消権 代理権
後見 判断能力を欠く常況 すべての法律行為 すべて
保佐 判断能力が著しく不十分 一定の重要行為 家裁の審判で追加
補助 判断能力が不十分 同意が必要な行為の一部 家裁の審判で追加

判断能力に疑義がある場合のリスク

判断能力を欠く方が参加した遺産分割協議は、無効となる可能性が高くなります。以下の事態を招きます。

  • 金融機関が協議書を受理しない
  • 後日、他の相続人から無効を主張される
  • 成年後見開始後に遺産分割協議をやり直しになる

判断能力に疑義があるのに、そのまま協議参加させてはならないというのが、難事例対応の出発点です。

実務フロー

認知症相続人あり
  ↓
主治医確認・本人情報シート作成依頼・診断書取得
  ↓
後見・保佐・補助の申立方針決定
  ↓
家裁申立(書類作成は司法書士、代理は弁護士)
  ↓
選任後に協議再開

行政書士の関与範囲

家庭裁判所への申立書作成は司法書士または弁護士の領域です(司法書士法第3条)。行政書士ができるのは以下です。

  • 戸籍・住民票等の基礎資料の整理
  • 財産目録の整備
  • 本人情報シートの聞き取り補助(記載は医師)
  • 司法書士・弁護士への引継ぎ資料作成

行方不明の相続人

対応の二択

  1. 不在者財産管理人選任(民法第25条)
  2. 失踪宣告(民法第30条、7年以上生死不明)

不在者財産管理人選任

  • 申立先:家庭裁判所(不在者の従来の住所地)
  • 申立権者:利害関係人(相続人等)
  • 費用:収入印紙800円、郵便切手、必要に応じ予納金
  • 予納金:事案ごとに差が大きく、数十万円〜数百万円の可能性があります
  • 管理人:弁護士・司法書士等が選任されることが多い

遺産分割に管理人が参加するには、家裁の権限外行為許可が必要です。裁判所実務では、不在者に不利な内容の遺産分割には許可が出にくく、少なくとも法定相続分の確保が求められる傾向があります。

失踪宣告

  • 普通失踪:不在が7年以上→期間満了時に死亡とみなす
  • 特別失踪:戦争・船舶沈没・震災等の危難後1年以上→危難が去った時に死亡とみなす

宣告が確定した後、その方の相続人が遺産分割に参加します。家裁への申立ては、書類作成が司法書士、代理は弁護士の領域です。

行政書士の役割

  • 住民票・戸籍附票で最後の住所を確認
  • 所在調査の材料整理(写真付きの調査報告書等)
  • 家裁申立前の資料パッケージ作成
  • 司法書士・弁護士への引継ぎ

外国籍の相続人

実務の核心

住所証明と署名証明の取得が核心になります。日本の戸籍制度・印鑑登録制度の外側にある方の身分と意思を、どう立証するかという論点です。

住所証明と署名証明

  • 在外公館(日本大使館・総領事館)発行の住所証明・署名証明
  • 居住国官憲の発行書面+日本語訳
  • 在外公館で取得できない場合、外国公証人の署名証明等を用いる運用があります

法定相続情報一覧図の利用制限

被相続人や相続人が日本国籍を有しない場合など、戸除籍で相続関係を証明できない案件では、法定相続情報証明制度が使えません。戸籍束+翻訳+別証明ルートで進めることになります。

翻訳

外国語文書には日本語訳と翻訳者情報の付記が必要です。翻訳者は行政書士・翻訳者でかまいません。自分で翻訳すれば翻訳者名を記載します。

準拠法の問題

被相続人が外国籍の場合、準拠法の判定が必要になります(法の適用に関する通則法第36条等)。日本国籍の被相続人の財産を外国籍相続人が相続する場合は、日本法で処理します。相続人の地位確認に国際私法の知識が必要な案件は、渉外相続に強い弁護士と連携します。

実務フロー

外国籍・海外居住相続人あり
  ↓
旅券・在留カード・現地身分証確認
  ↓
住所証明取得方法確認(在外公館 or 現地官憲 or 外国公証人)
  ↓
署名証明の可否確認
  ↓
外国語文書の翻訳者確保
  ↓
法定相続情報の利用可否を判定
  ↓
不可なら戸籍束+翻訳+別証明ルートで進行

非嫡出子・養子・代襲相続

非嫡出子

平成25年の法改正で、嫡出でない子の相続分は嫡出子と同等になりました。旧戸籍の「男」「女」という続柄表記に引きずられず、認知の有無と親子関係の成立時点を確認します。改製原戸籍まで遡って認知欄を確認しないと、婚姻前に認知した子を見落とすリスクがあります。

養子の種別

種別 実親との関係 相続権
普通養子 存続(実親・養親の両方) 両方
特別養子 原則終了 養親のみ

戸籍の養子縁組記載で判定します。「養父」「養母」の記載は普通養子、「民法817条の2による裁判確定」等の記載は特別養子です。

代襲相続の原因

代襲は以下の原因で生じます。

  • 死亡
  • 相続欠格(民法第891条)
  • 廃除(民法第892条)

相続放棄は代襲原因に含まれません(放棄者の直系卑属は代襲しない)。

代襲の範囲

  • 子の系統:再代襲あり(子→孫→曾孫)
  • 兄弟姉妹の系統:甥姪まで(再代襲なし)

兄弟姉妹の甥姪の子まで相続人に含めると、過大な戸籍収集と誤った協議メンバー決定につながります。

相続放棄・限定承認

相続放棄

  • 期間:自己のために相続開始があったことを知ってから3か月以内
  • 申述先:家庭裁判所(被相続人の最後の住所地)
  • 申述書の作成支援は司法書士、家裁での代理は弁護士の領域

行政書士は制度のご案内と資料整理にとどめます。家裁書式を使用してご本人が直接申述する運用が基本で、複雑な事案では司法書士・弁護士へお繋ぎします。

限定承認

相続人全員が共同で申述します。1人でも消極的だと実行が難しくなります。家裁領域で、当事務所は資料整理を行い司法書士・弁護士にお繋ぎします。

難事例共通の鉄則

  1. 相続人確定前に協議書ドラフトを回さない
  2. 起算日と期限を先に固定する
  3. 事実年表と家系図を先に作る
  4. 争点が見えたら直ちに他士業へ連携する

この順番を崩さないことが、難事例対応で最も重要です。

紛争化した場合の撤退ライン

以下の兆候が見えたら、当事務所は業務を停止して弁護士にお繋ぎします。

  • 相続人の一部が押印を明確に拒否
  • 特別受益・寄与分・使途不明金を主張
  • 感情対立で協議が成立しない
  • 相続人の一部が弁護士を立てた
  • 遺留分侵害額請求の通知が到達

家庭裁判所の遺産分割調停への移行もこの段階です。合意に至らないと自動的に審判に進みます。家裁提出書類の作成支援は司法書士、相手方との交渉・調停代理は弁護士が基本です。

業際の注意

  • 家庭裁判所への申立書作成:司法書士の領域です(司法書士法第3条)
  • 家裁での代理・相手方との交渉:弁護士の独占業務です(弁護士法第72条)
  • 準拠法の判断・渉外相続の争点:弁護士の領域です
  • 特別代理人の申立て:司法書士(書類作成)・弁護士(代理)の領域です

難事例の多くは、行政書士単独では完結しません。当事務所は、資料整理と家系図作成で他士業に引き継ぎやすい状態を作り、依頼者の方が複数の専門家をまたぐ負担を軽減します。

よくある不備

  • 認知症の相続人を協議に入れたまま協議書作成→後で無効
  • 戸籍附票だけで所在調査を済ませた行方不明案件→家裁で追加資料を要求される
  • 普通養子と特別養子を混同→実親の相続権を見落とし
  • 兄弟姉妹の甥姪の子まで相続人に含める誤り
  • 外国籍相続人について法定相続情報一覧図を申出→却下
  • 相続放棄の申述期間(3か月)を徒過
  • 未成年者の利益相反を見落とし、特別代理人選任せず協議

あおば事務所の進め方

当事務所では、初回面談のヒアリングで相続人の特殊事情を確認し、該当する難事例の類型に応じて工程を組みます。認知症の方・行方不明の方がいる案件は、家裁手続の期間(数か月〜半年以上)を見込んだスケジュールをご提示します。外国籍の相続人がいる案件は、居住国の在外公館で何が取得できるかを最初に確認します。渉外相続の準拠法争点がある案件は、渉外相続に強い弁護士と初期段階から連携します。

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