本文へスキップ
あおば行政法務事務所

相続・遺言 / igon

死亡後の手続き—遺言発見から執行開始まで

死亡直後の期限のある手続、戸籍収集(広域交付制度)、相続登記義務化、相続税申告、預金払戻の実務を、横浜市の行政書士が時系列で整理します。

#死亡後手続#広域交付#相続登記義務化#相続税#準確定申告#仮払制度#法定相続情報#遺言執行

ご親族が亡くなった後、遺言の有無にかかわらず、期限のある手続が次々と発生します。このページは、遺言執行の視点から死亡直後〜10か月までの手続と期限、戸籍収集・相続登記・相続税の実務を整理します。相続業務側からの詳細は別途の相続シリーズで扱います。

結論

  • 死亡届は7日以内、相続放棄・限定承認は3か月以内、準確定申告は4か月以内、相続税申告は10か月以内です。
  • 相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内です(不動産登記法第76条の2)。
  • 2024年3月1日施行の戸籍広域交付制度で、本籍地以外の窓口でも戸籍を請求できます(本人・配偶者・直系血族のみ、代理人不可)。
  • 遺産分割前でも、1金融機関あたり上限150万円の仮払制度を利用できます。
  • 登記は司法書士、相続税申告は税理士の独占業務です。

背景と制度の目的

死亡後の手続は、戸籍・税務・登記・年金・保険と多岐にわたり、それぞれに期限があります。近年の制度改正は、この負担を軽減する方向に進んでいます。広域交付制度は戸籍収集の負担を大きく軽減し、法定相続情報証明制度は一度集めた戸籍の使い回しを可能にしました。一方、相続登記義務化(2024年4月1日施行)は怠慢を防ぐために過料制度を導入しています。

遺言執行の観点から見ると、死亡直後に執行者が動き出すことで、これらの期限管理と他士業との連携を一元化できます。執行者の役割は遺言内容の実現ですが、その前提として相続人全体の死後事務の司令塔機能も事実上担います。

主要な期限一覧

期限 手続 根拠
7日以内 死亡届(市区町村) 戸籍法
14日以内 世帯主変更届、年金受給者死亡届
3か月以内 相続放棄・限定承認の申述(家裁) 民法第915条
4か月以内 被相続人の所得税準確定申告 所得税法
10か月以内 相続税申告・納付(課税される場合) 相続税法
3年以内 相続登記申請(義務化) 不動産登記法第76条の2
1年 遺留分侵害額請求(知った時から) 民法第1048条

戸籍収集(広域交付制度)

広域交付制度(2024年3月1日施行)

本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できます。従来、本籍地が遠方で転籍の多い被相続人の戸籍収集は相続手続の大きな負担でしたが、最寄りの窓口で一括請求できるようになりました。

請求できる者

  • 本人
  • 配偶者
  • 直系血族(親・子・孫等)

代理人による広域交付請求は認められていません(委任状での請求不可)。兄弟姉妹が相続人となるケースや、行政書士が職務上請求する場合は、従来どおり本籍地に個別請求します。

対象外

  • 戸籍の附票
  • 身分証明書
  • 一部のコンピュータ化前の改製原戸籍

相続手続に必要な戸籍

目的 必要戸籍
相続人確定 被相続人の出生から死亡までの連続戸籍
代襲相続の確認 先に死亡した相続人の戸籍
直系尊属相続 父母・祖父母の戸籍
兄弟姉妹相続 被相続人の両親の出生〜死亡の戸籍

法定相続情報証明制度

一度戸籍を集めれば、法定相続情報一覧図を作成し、法務局で認証を受けられます。以降は一覧図の写しで各種手続が可能です。無料交付で、行政書士も代理申出できます。金融機関・法務局・税務署で使え、一度に複数枚請求できるため、並行して進める手続が多い場面で特に有効です。

相続登記義務化(2024年4月1日施行)

義務の内容

相続等で不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科されます。

施行前相続の猶予

2024年4月1日時点で未登記の相続分は、2027年3月31日までに登記申請が必要です。古い相続で名義変更を放置している不動産がある場合、早めの対応をお勧めします。

相続人申告登記

遺産分割が終わらない場合の暫定措置として、相続人であることのみを申告する簡便な登記制度が設けられました。本格的な相続登記より手続負担が軽くなります。

所有不動産記録証明制度(2026年2月2日施行)

被相続人名義の不動産を全国一覧で証明する制度が始まりました。名寄帳では把握できなかった他都道府県の不動産も確認できます。

業務範囲の境界

登記申請は司法書士・弁護士の独占業務です。行政書士は、遺言執行者として司法書士に復任(民法第1016条)するか、顧客にご紹介する形で関与します。

相続税の基礎

基礎控除

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

配偶者+子2人の場合、3,000万円+600万円×3=4,800万円が基礎控除です。相続財産がこの金額を下回れば相続税申告は原則不要です。

申告期限と納付

相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。金銭一括納付が原則で、困難な場合は延納・物納の検討になります。期限後申告は加算税・延滞税の対象です。

配偶者の税額軽減

配偶者が取得する財産は、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。ただし申告は必要です。

小規模宅地等の特例

居住用宅地・事業用宅地について、一定要件下で評価額を最大80%減額できます。要件判定は税理士の専門領域です。

遺言段階での税務配慮

行政書士は税務代理をできませんが、以下の観点で遺言者に注意喚起します。

  • 相続税が発生する可能性(基礎控除を超えるか)
  • 納税原資は足りるか(不動産偏重でキャッシュ不足のリスク)
  • 配偶者税額軽減・小規模宅地特例の適用可否
  • 税理士との連携が必要なら紹介

預金の払戻・解約

遺言執行者による払戻

  1. 金融機関に相続発生の届出(口座凍結)
  2. 遺言執行者資格の証明(公正証書遺言原本等)
  3. 戸籍(被相続人の死亡を示す戸籍)
  4. 執行者の印鑑証明書・本人確認書類
  5. 金融機関所定の払戻請求書

所要期間は書類提出から払戻まで2週間〜1か月が目安です(金融機関により異なる)。

仮払制度

遺産分割前でも、各相続人または執行者が、1金融機関あたり上限150万円、または相続分×預金残高×1/3のいずれか低い額まで仮払を受けられます。葬儀費用等に充当するための制度です。

年金・社会保険関係

国民年金・厚生年金

  • 受給者死亡: 10日以内(厚生年金)/14日以内(国民年金)に「受給権者死亡届」
  • 未支給年金: 生計同一の遺族が請求可
  • 遺族年金: 別途請求(配偶者等)

健康保険

  • 国民健康保険証・後期高齢者医療保険証の返却(14日以内)
  • 葬祭費・埋葬料の請求(5万円程度、自治体・協会けんぽ)

介護保険

  • 被保険者証の返却
  • 高額介護サービス費の請求

準確定申告

被相続人が年金以外の所得(事業所得・不動産所得等)があった場合、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に所得税の準確定申告が必要です。医療費控除の対象となる医療費支払がある場合や、源泉徴収税の還付を受けたい場合も準確定申告を行います。

税理士の領域で、当事務所は必要性のご案内と税理士のご紹介にとどめます。

死後事務委任契約との関係

事項 遺言 死後事務委任契約
財産の承継 ×
葬儀・供養の希望 △(付言事項、法的拘束なし) ○(契約で拘束可)
遺品整理 ×
公共料金解約 △(執行者が付随的に)
SNSアカウント削除 ×

おひとり様の案件では、遺言と死後事務委任契約をセットでご提案するのが実務のスタンダードです。

よくある誤解・不備

期限を過ぎてから動き出す

相続放棄の3か月、準確定申告の4か月、相続税申告の10か月は延長困難です。死亡後1か月以内に当事務所にご相談いただければ、期限管理の全体設計ができます。

戸籍収集に数か月かかると思い込む

広域交付制度と法定相続情報証明制度の活用で、以前より大幅に短縮できます。

自分で相続登記ができると思い込む

簡単な案件ならご本人でも可能ですが、遺言による登記や代償分割を伴う登記は司法書士に依頼するのが確実です。義務化で過料リスクもあるため、早めに連携先を決めておきます。

相続税がかからない前提で申告をしない

基礎控除を超える可能性がある場合、税理士に確認したうえで判断します。配偶者税額軽減や小規模宅地特例の適用を受けるには申告が必要な点にもご注意ください。

業際の注意

戸籍収集、法定相続情報一覧図の作成、遺言執行は行政書士の業務範囲です。相続登記は司法書士、相続税申告と準確定申告は税理士、遺産分割の紛争対応は弁護士の領域です。当事務所は執行者として死後事務全体の進行管理を担い、専門領域は連携先に引き継ぎます。

あおば事務所の対応

死亡直後のご相談では、期限のある手続を一覧化し、当事務所で担当する業務と連携先に引き継ぐ業務を切り分けてご提示します。戸籍収集・法定相続情報一覧図・預金払戻・遺言執行は当事務所で、相続登記は連携司法書士、相続税申告と準確定申告は連携税理士が担当します。

遺言がある案件では、執行者としての就任通知から財産目録作成、名義変更・払戻、分配、完了報告まで一貫してお引き受けします。おひとり様の案件では、生前に遺言と死後事務委任契約をセットでお作りし、死後の動きが確実に実現する設計をご提案します。

関連ページ

個別のご相談は無料でお受けします

記事の内容について、お客様の事業に即した個別の判断は、初回相談(無料)で直接ご案内します。

この記事を改善する(スタッフ用)

事実誤認・誤字脱字等、お気づきの点があればこちらから報告できます