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あおば行政法務事務所

相続・遺言 / igon

遺言書作成の業務範囲—行政書士・公証人・弁護士の役割

遺言書作成では、行政書士・公証人・弁護士・司法書士・税理士が役割を分担します。非弁行為の境界と連携トリガーを、横浜市の行政書士が実務目線で整理します。

#遺言書#行政書士#公証人#弁護士法72条#司法書士#税理士#業際#連携

「遺言書は誰に頼めばよいのか」は、ご相談の最初にいただくご質問です。このページは、遺言書の作成から執行までに関わる各専門職の役割と、どの場面で誰に依頼するのかを整理します。

結論

  • 遺言書の起案・作成支援は、紛争がない限り行政書士の業務範囲です。
  • 公正証書遺言は公証人が作成し、行政書士は原案作成と公証役場との調整を担います。
  • 相続人間に紛争がある、または遺言無効が主張された場合は、弁護士の領域となります。
  • 相続登記は司法書士の独占業務、相続税申告は税理士の独占業務です。
  • 当事務所は遺言執行者として就任し、登記は司法書士、申告は税理士と連携して遺言内容を実現します。

背景と制度の目的

遺言書作成には、法律・登記・税務の論点が複雑に絡みます。専門職ごとに独占業務の範囲が法律で定められており、境界を越えると業法違反となります。一方で、顧客から見れば「誰に何を頼めばよいか」がわかりにくく、最初の入口で迷うことが少なくありません。

ここに役割分担を設けている目的は、専門性の担保と、顧客の利益保護です。紛争解決は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士がそれぞれ責任を持つことで、各分野で専門的な判断が保証されます。行政書士は、紛争に至らない段階の書類作成と権利義務の整理、そして遺言執行の実務を担います。

行政書士の業務範囲

できること

行政書士法第1条の2は、「官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類」の作成を行政書士の業務と定めます。遺言書は権利義務に関する書類ですので、紛争がない限り起案・作成支援が可能です。

  • 遺言書(公正証書・自筆証書)の原案作成
  • 公証役場との事前調整、必要書類の収集
  • 財産調査・相続関係図の作成
  • 付言事項の文案作成
  • 遺言執行者としての就任と執行実務
  • 相続人間で合意形成済みの遺産分割協議書作成

できないこと

他士業の独占業務は扱えません。また、紛争性のある事件への関与は、たとえ書類作成の形式でも弁護士法第72条に抵触します。

公証人の役割(公正証書遺言)

公証人は公証人法に基づき任命される公務員で、公正証書遺言の作成主体です。民法第969条の方式により、遺言者の口授を聞き取って筆記し、証人2名の立会いのもとで遺言書を整えます。

当事務所の業務は、公証人に提出する原案の起草、財産目録・戸籍の整備、公証役場との日程調整、作成当日の証人手配と立会いです。公正証書遺言そのものの作成権限は公証人にあり、行政書士は公証人の手前までを担当します。

弁護士法第72条(非弁行為の禁止)

条文の趣旨

弁護士または弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して法律事務を取り扱い、またはこれを周旋することを業としてはなりません。ここでいう「法律事件」は、紛争性のある事件を指します。

遺言業務での具体的な線引き

業務 行政書士
遺言書の起案・作成支援(紛争なし)
相続人間で合意形成済みの遺産分割協議書作成
紛争化した案件での交渉代理 不可(非弁)
遺留分侵害額請求の交渉代理 不可
遺言無効確認訴訟の代理 不可
調停・審判での代理 不可

交渉・調整が必要な局面に入ったら、当事務所は書類作成を中断し、弁護士への連携に切り替えます。「書類を整える」立場と「相手方と交渉する」立場は別物です。

司法書士法第3条(登記の独占)

相続登記は司法書士の独占業務です。行政書士が登記申請書を業として作成することはできません。

一方、遺言執行者に就任した場合、民法第1016条により登記業務を司法書士に復任(サブの委任)できます。当事務所は執行者として不動産の登記事項証明書・評価証明書を整備し、登記申請自体は連携先の司法書士に委ねるのが通常の運用です。

相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象となります。遺言執行の工程に登記を組み込む設計が重要です。

税理士法第52条(税務の独占)

相続税の申告書作成・税務代理・個別の税額計算は税理士の独占業務です。

行政書士が扱えるのは、相続税の一般情報(申告期限10か月、基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数)の案内までです。「あなたの場合の税額はこれ」「こう申告すれば節税できる」といった個別のアドバイスは税理士にお願いします。

基礎控除を超える可能性が見えた時点で、提携税理士を紹介します。相続税申告は10か月の期限があるため、遺言作成段階から税理士に情報を共有しておくと、執行時の動きがスムーズになります。

連携トリガー

弁護士に切り替えるべき場面

  • 遺言無効の主張が顕在化した
  • 相続人間の対立が調停・訴訟に発展した
  • 遺留分侵害額請求の交渉代理が必要になった
  • 財産隠匿・使い込みの疑いが生じた
  • 相続人の一部と連絡不能・絶縁状態で調整が必要

司法書士に切り替えるべき場面

  • 相続登記が必要(不動産が絡むすべての案件)
  • 商業登記が絡む事業承継

税理士に切り替えるべき場面

  • 相続税の申告が必要(基礎控除超過の見込み)
  • 準確定申告が必要
  • 事業承継の株式評価

よくある誤解・不備

「行政書士は遺言に関われない」という誤解

紛争がない遺言書の起案・作成支援は、行政書士法上の書類作成業務に含まれます。公正証書遺言の原案作成と公証役場調整は、行政書士の中核業務の一つです。

行政書士が交渉まで引き受けてしまう

「あとは先方と話をつけておきます」と引き受けた時点で非弁の疑いが生じます。交渉の局面に入ったら、必ず弁護士に引き継ぎます。

相続登記まで行政書士が申請してしまう

登記申請代理は司法書士の独占業務です。遺言執行者として関与する場合も、登記は司法書士に復任します。

相続税の個別計算を行政書士が説明してしまう

基礎控除・期限等の一般情報は可ですが、個別事案の税額や節税策は税理士領域です。「税金は税理士に」を徹底します。

あおば事務所の対応

当事務所では、初回相談時に紛争の有無を確認し、受任範囲を明示します。遺言書作成は紛争のない案件に限って受任し、相続人間に対立の兆しがある場合は、最初から弁護士との共同対応をご提案します。

執行フェーズでは、遺言執行者として就任し、登記は提携司法書士、税務は提携税理士と連携するチーム体制で遺言内容を実現します。単独の専門職だけで完結しない案件こそ、連携先が顔の見える関係で動ける体制が強みになります。

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