一般貨物自動車運送事業 / yoken
一般貨物自動車運送事業の8つの許可要件—営業所・車庫・車両・人員・資金の実務
貨物自動車運送事業法に基づく経営許可の8要件を、用途地域表・前面道路幅員早見表・資金の積算方法までまとめて解説。神奈川運輸支局管轄を中心に、横浜の行政書士が実務目線で整理します。
一般貨物自動車運送事業の許可(いわゆる緑ナンバー)を取得するには、貨物自動車運送事業法とその下位規則に基づく8つの要件をすべて満たす必要があります。物件を契約する前・人を採用する前に、この8要件を前提に設計することが、無駄な出費と時間のロスを避ける最大のコツです。
結論
- 許可の8要件は 営業所 / 車庫 / 休憩・睡眠施設 / 車両 / 運行管理体制 / 整備管理体制 / 資金計画 / 法令遵守 です。
- 車両は営業所ごとに 5台以上、人員は最低 6名(運転者5・運行管理者1)。
- 自己資金は所要資金と同額以上(目安 1,500万〜3,000万円)を、申請から許可日まで 常時確保。
- 営業所は用途地域の制限があり、第一種・第二種低層住居専用地域等では設置不可。
- 車庫は営業所から 20km以内(横浜市・川崎市・東京23区)/10km以内(その他関東)、前面道路の幅員証明が必要。
- 常勤役員が 法令試験(30問中24問以上) に合格することが必須です。
要件1:営業所
事業の運営拠点です。使用権原と法令適合の2点が中心論点になります。
使用権原と契約条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自己所有 | 登記簿謄本で立証 |
| 賃貸 | 賃貸借契約書で立証。契約期間は概ね2年以上 |
| 契約名義 | 申請法人の名義であること。個人名義や関連会社名義は補正対象 |
| 使用目的 | 「事務所」として使用できる記載があること |
賃貸契約を結ぶ前に、契約書の名義・期間・使用目的を確認します。更新条項があれば実質的に2年以上として扱われますが、自動更新でも運輸局が個別に判断するため、契約前のご相談をお勧めします。
用途地域の制限
営業所は都市計画法上の用途地域によって設置の可否が分かれます。第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域では、事務所そのものの建築が認められない、もしくは運送事業の営業所としては認められません。
| 用途地域 | 設置 | 備考 |
|---|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域 | × | 事務所建築そのものが不可 |
| 田園住居地域 | × | 事務所建築が不可 |
| 第一種中高層住居専用地域 | × | 事務所の建築が認められない |
| 第二種中高層住居専用地域 | △ | 1,500㎡以下かつ2階以下 |
| 第一種住居地域 | △ | 3,000㎡以下 |
| 第二種住居地域・準住居地域 | ○ | 制限なし |
| 近隣商業・商業地域 | ○ | 制限なし |
| 準工業・工業・工業専用地域 | ○ | 最も多く選ばれる立地 |
物件を契約する 前に 、当該地の用途地域を必ず確認してください。用途地域違反に後から気づくと、敷金・礼金・仲介手数料が戻らず、再度の物件探しで数か月を失います。
付属要件
- 事務机・電話・プリンタ・書庫・点呼記録の保管場所が設置できる広さ
- 休憩施設と明確に区画されていること(パーテーション等で分離)
- 建築基準法・農地法に抵触しないこと(農地転用がなされていれば確認)
要件2:車庫
車両の保管場所です。運送事業の審査で最も補正が入りやすい領域の一つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 営業所との距離 | 横浜市・川崎市・東京23区は20km以内、その他の関東は10km以内 |
| 収容能力 | 全車両を駐車可能な面積。普通貨物で1台あたり概ね38㎡ |
| 車両間隔 | 車両間50cm以上、境界線から50cm以上 |
| 前面道路 | 幅員証明書の取得が必要(国道は不要) |
| 使用権原 | 自己所有または賃貸借契約 |
車両5台なら、単純計算で38㎡×5=190㎡以上が目安です。間隔や切り返しスペースを含めると、さらに余裕を見る必要があります。
前面道路の必要幅員(相互通行・市街地の場合)
| 車種の例 | 車両幅 | 必要幅員 |
|---|---|---|
| 小型トラック(2t) | 約1.7m | 3.9m以上 |
| 中型トラック(4t) | 約2.2m | 4.9m以上 |
| 大型トラック(10t) | 約2.5m | 5.5m以上 |
| 大型ダンプカー | 約2.5m | 5.5m以上 |
前面道路の幅員が不足する車庫は、どれだけ他の条件が揃っていても認められません。候補地を契約する前に、道路台帳や道路管理者(市区町村)での確認をお勧めします。
要件3:休憩・睡眠施設
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設置場所 | 営業所への併設が原則。不可なら車庫に併設(10〜20km以内) |
| 休憩施設 | 運転者が有効に利用できる適切な施設 |
| 睡眠施設 | 夜間運行がある場合に必要。1人あたり2.5㎡以上 |
日中の土砂運搬が主で夜間運行のない事業であれば、睡眠施設は原則不要です。休憩施設のみで足りるケースが多くあります。
要件4:車両
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最低台数 | 営業所ごとに5台以上 |
| 車検証の用途 | 「貨物」と記載されていること |
| けん引車+被けん引車 | 1セットで1台とカウント |
| 使用権原 | 購入契約書またはリース契約書(概ね1年以上) |
軽自動車は対象外です(別途「貨物軽自動車運送事業」の届出制度があります)。車両のリース契約は、リース料の積算が資金計画にも影響するため、契約条件を申請書と整合させる必要があります。
排出ガス基準を満たさない旧型車を組み込むと、特定地域での運行が条例により制限されることがあります。NOx・PM法、ディーゼル車規制の対象エリアを運行する計画がある場合は、車両選定の段階で対応年式を確認してください。
要件5:運行管理体制
運行管理者は、運転者の点呼・指導監督・運行指示を担う中核の人員です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必要人数 | 常勤1名以上(車両29台までは1名、以降30台ごとに1名追加) |
| 兼務制限 | 運転者との兼務は不可 |
| 資格取得① | 運行管理者試験合格(受験資格:1年以上の実務経験 or 基礎講習修了) |
| 資格取得② | 5年以上の実務経験+所定講習5回以上修了 |
運行管理者試験は年2回(3月・8月頃)実施され、合格率は30〜40%です。既に有資格者がいれば選任届のみで進められますが、これから資格を取得する場合は、試験日程を逆算してスケジュールを組みます。
点呼は 対面が原則 です。車庫と営業所が離れていることは「やむを得ない場合」には該当しません。点呼を非対面前提で設計すると、許可審査だけでなく、運輸開始後の巡回指導・監査でも重大な指摘を受けます。対面で運用できる配置を前提に、営業所と車庫を設計してください。
要件6:整備管理体制
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必要人数 | 営業所ごとに常勤1名以上 |
| 兼務 | 運転者との兼務は可能 |
| 資格取得① | 自動車整備士3級以上 |
| 資格取得② | 同種自動車の点検整備に2年以上の実務経験+選任前研修修了 |
| 外部委託 | 原則禁止 |
整備管理者は運転者との兼務が可能なため、5名の運転者のうち1名が資格要件を満たせば、人員の追加は不要です。実務経験ルートで選任する場合は、地方運輸局が実施する選任前研修の受講が必要で、開催回数が限られるため早めの予約が無難です。
要件7:資金計画
所要資金を積算し、同額以上の自己資金を 申請日から許可日まで常時確保 することが求められます。
所要資金の計算
| 費目 | 計算方法 |
|---|---|
| 車両費 | 一括:全額/分割:頭金+1年分の分割金/リース:1年分のリース料 |
| 施設費 | 一括:全額/賃貸:初期費用+1年分の賃料 |
| 保険料 | 自賠責保険+任意保険の1年分 |
| 税租公課 | 自動車税・重量税等の1年分 |
| 運転資金 | 人件費・燃料油脂・修繕費等の6か月分 |
| 登録免許税 | 12万円(許可後に納付) |
自己資金の立証
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 金額 | 所要資金と同額以上 |
| 確保期間 | 申請日から許可日まで常時確保 |
| 立証方法 | 金融機関発行の残高証明書(原本) |
| 提出回数 | 2回(申請時と審査中の追加確認) |
審査中に残高が動くと、その時点で許可が見込めなくなります。申請用の代表口座を固定し、他の資金移動は別口座で行う運用を強くお勧めします。いわゆる「見せ金」による一時的な残高証明は厳格に排除されます。
資金の目安
車両の調達方法によって幅があります。
- 車両リース・施設賃貸:約1,500〜2,000万円
- 車両購入(中古)・施設賃貸:約2,000〜3,000万円
- すべて自己所有:それ以上
要件8:法令遵守・役員法令試験
役員法令試験
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受験者 | 常勤役員(代表取締役または取締役) |
| 出題数 | 30問 |
| 合格基準 | 24問以上正解(8割) |
| 試験時間 | 50分 |
| 実施時期 | 奇数月(1・3・5・7・9・11月) |
| 受験回数 | 2回以内に合格が必要。2回不合格で申請却下 |
出題は貨物自動車運送事業法・同施行規則・輸送安全規則・労働基準法・道路交通法など13法令からです。市販問題集や運輸支局が公表する出題範囲を使って、申請前に十分な対策時間を確保します。
社会保険・欠格事由・損害賠償能力
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の加入義務者は必ず加入 |
| 欠格事由 | 許可取消から5年未経過、拘禁刑から5年未経過、自主廃業から5年未経過 等 |
| 対人賠償 | 無制限 |
| 対物賠償 | 200万円以上(実務上は無制限を推奨) |
最低人員体制(車両5台の場合)
| 役職 | 人数 | 備考 |
|---|---|---|
| 運転者 | 5名 | 常勤・社会保険加入 |
| 運行管理者 | 1名 | 運転者との兼務不可 |
| 整備管理者 | (1名) | 運転者との兼務可 |
| 合計 | 最低6名 | 整備管理者を運転者が兼務する場合 |
落とし穴(よくある補正指示)
現場で繰り返し起こる事故の型を、事前に共有しておきます。
- 用途地域の未確認で物件を契約し、敷金・礼金が無駄になる
- 賃貸借契約の期間が短い(2年未満)、または名義が代表者個人
- 自己資金が審査中に動き、再提出の残高証明で下回る
- 点呼を非対面前提で設計し、実態との不整合を指摘される
- 法令試験不合格が続き、2回目で申請却下に至る
- 前面道路の幅員不足に後から気づき、車庫を再選定
- 補正対応の遅れで審査が長期停止
これらは、要件診断の段階で防げる領域です。契約書にサインする前、人を採用する前に、一度ご相談ください。
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※本記事は概要を整理するものであり、個別事案の許可可否を保証するものではありません。具体的な判断は、契約書・登記簿・決算書・人員名簿などを拝見したうえで、個別にご相談ください。