2026年6月成立|成年後見制度が「必要な期間だけ使える」しくみへ(施行は2028年度中の見込み)
2026年6月17日、成年後見制度を見直す改正民法が成立。終身制を廃して必要な期間だけ利用でき、「後見・保佐・補助」の3類型を「補助」に一本化、支援者の交代も柔軟に。ただし施行は2028年度中の見込みで当面は現行制度。横浜・青葉の行政書士が解説します。
2026年6月17日、成年後見制度を抜本的に見直す改正民法が成立しました。判断能力が十分でない方を支える大切な制度ですが、「一度始めると原則ご本人が亡くなるまでやめられない」「支援者を選びにくい・代えにくい」といった声が長く指摘されてきました。今回の改正は、ご本人の意思をより尊重し、必要なときに必要なだけ使える、柔軟で利用しやすい制度への転換を図るものです。本記事では、改正の中身と、当面の相談対応への影響を整理します。
この改正はまだ施行されていません。 施行は公布から2年6か月以内(一部を除く)=2028年度中の見込みです。当面は現行の成年後見制度での対応となります。「もう制度が変わった」という意味ではありませんので、ご注意ください。
結論
- 成年後見制度を見直す改正民法が2026年6月17日に成立しました
- 最大の変更は、終身制をやめ、必要な期間だけ利用できるしくみにする点です。家庭裁判所が必要なくなったと認めれば、制度の利用を終えられる「終われる後見」へ
- 「後見・保佐・補助」の3類型を「補助」に一本化し、必要な行為に限って代理権・同意権を個別に付与する「オーダーメード型」の支援設計が可能に
- 本人の利益のために特に必要なときは、支援者(後見人)の交代が認められる方向
- 報酬は、利用期間に応じた負担ではなく、実際に行った事務の内容・成果に応じた体系への見直しが図られます
- 施行は2028年度中の見込み(公布から2年6か月以内・一部を除く)。現在ご利用中の方や、これから検討される方への経過措置は、施行に向けて明らかになります
なぜ見直すのか(背景)
現行の成年後見制度(2000年〔平成12年〕施行)には、利用が伸び悩む構造的な課題が指摘されてきました。
- 一度始めると原則やめられない(終身制):判断能力が回復しても、本人が亡くなるまで利用が続く運用
- 支援者を選びにくい・代えにくい:家庭裁判所が選任し、本人や家族の意向で容易には交代できない
- 権限が包括的すぎる:財産管理・法律行為を広く支援者が代理し、本人の自己決定が後退しやすい
- 報酬負担:利用期間が長期化し、月額報酬の累積負担が重い
- 3類型が硬直的:「後見・保佐・補助」が判断能力で固定され、実情に合わせにくい
こうした課題をふまえ、「本人の意思を尊重し、必要なときに必要なだけ使える、柔軟で利用しやすい制度」への転換が図られました。
改正の主なポイント
| 改正項目 | 現行制度 | 改正後(施行後) |
|---|---|---|
| 利用期間 | 原則、本人が亡くなるまで継続(終身制) | 必要な期間に限って利用。家裁が不要と認めれば終了できる |
| 類型 | 後見・保佐・補助の3類型 | 「補助」に一本化し、必要な範囲だけ支援 |
| 権限 | 包括的に付与されやすい | 必要な行為に限って個別に付与(オーダーメード型) |
| 支援者の交代 | 容易には代えにくい | 本人の利益のために特に必要なときは交代を認める |
| 報酬 | 利用期間に応じた負担になりやすい | 事務の内容・成果に応じた体系へ見直し |
1. 終身制の廃止=有期・見直し制の導入(最大の目玉)
「利用を始めたら原則 本人死亡まで継続」をやめ、必要な期間に限って利用できるようにします。制度を利用する必要がなくなったと家庭裁判所が認めたときは、審判を取り消して制度を終了できる仕組みが導入され、一定期間ごとに必要性を見直す運用が想定されています。
2. 3類型の一本化(後見・保佐 → 「補助」へ)
現行の「後見」「保佐」「補助」の3類型を「補助」に一本化します。包括的に権限を与える現行のしくみに代え、必要な行為に限って代理権・同意権を個別に付与する設計を可能にし、本人にできることは本人に残し、支援が必要な部分だけを補う方向へ転換します。
3. 支援者(後見人)の交代・選任の柔軟化
本人の利益のために特に必要があるときは、支援者の交代が認められるようになります。本人の状況や相性、生活への適合性に応じた、より柔軟な選任・交代の運用が想定されています。
4. 報酬の見直し
利用期間に応じた負担ではなく、実際に行った事務の内容・成果に応じた報酬体系への見直しが図られます。個別の金額は、施行に向けた制度設計(最高裁規則・関係政省令等)で具体化される見込みです。
経緯とスケジュール
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 令和7年(2025)6月 | 法務省 法制審議会が「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」を取りまとめ・パブリックコメント |
| 令和8年(2026)1月 | 法制審 部会が改正要綱案を取りまとめ(答申) |
| 令和8年4月3日 | 政府が改正案を閣議決定・国会提出 |
| 令和8年6月17日 | 参議院本会議で可決・成立(改正民法) |
| 施行 | 公布から2年6か月以内(一部を除く)=2028年度中の見込み |
「成立=即施行」ではありません。実際の運用変更は施行日(2028年度中の見込み)からです。施行に向けて、家庭裁判所の運用・最高裁規則・関係政省令が整備されていきます。
よくある誤解の整理
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 「2026年からすぐ制度が変わる」 | 成立は2026年6月。施行は2028年度中の見込み(公布から2年6か月以内) |
| 「後見制度はなくなる」 | なくなりません。3類型を「補助」に一本化し、有期・柔軟化する見直しです |
| 「もう後見はやめられる」 | 施行後、家裁が不要と認めた場合に終了できる仕組み。現時点の利用者の即時終了ではありません |
| 「報酬が必ず安くなる」 | 事務の内容・成果に応じた体系へ見直し。個別の金額は今後の制度設計次第です |
相談対応への影響(行政書士の視点)
- 当面(施行まで)は現行制度が継続します。現に後見・保佐・補助を利用中の方への経過措置・移行の取扱いは、施行に向けて明らかになる見込みです(当事務所でも情報を継続フォローします)
- 「いったん後見を付けると一生続くのが不安」というご相談に対し、改正で「必要な期間だけ」「見直し可能」になる方向をご案内できます(ただし施行時期に留意)
- 任意後見・家族信託・遺言との役割分担をご説明する場面が増えると考えられます。あわせて創設されるデジタル遺言(保管証書遺言)も、遺言のご相談に関係します
業務範囲について:家庭裁判所への後見開始の申立て手続の代理や後見人への就任は、司法書士・弁護士等の専門職の領域です。当事務所(行政書士)は、制度のご説明、任意後見契約書(公正証書)の原案づくりの補助、見守り・財産管理に関する契約書作成の支援などの範囲でお手伝いし、必要に応じて連携する司法書士・弁護士をご紹介します。個別案件は内容を確認のうえ対応します。
あおば事務所のご支援
行政書士あおば行政法務事務所では、ご本人・ご家族の状況にあわせて、次のご相談を承っています。
- 将来の備えの整理:任意後見・遺言・家族信託など、ご本人に合った備え方の比較・ご提案
- 任意後見契約・見守り契約のご相談:公正証書の原案づくりの補助、公証役場との調整
- 遺言・相続のご相談:自筆証書遺言(法務局保管)・公正証書遺言の比較、相続手続のご案内
- 連携専門職のご紹介:法定後見の申立てが必要な場合は、司法書士・弁護士と連携してご対応
「うちの場合はどう備えればよいか」など、施行を待たずにお気軽にご相談ください。
関連ページ
出典
- 法務省 民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案(令和7年6月10日)
- 財産管理の成年後見、途中終了・交代しやすく 改正民法が成立(日本経済新聞 2026年6月17日)
- 成年後見制度「補助」に一本化 民法改正案を閣議決定(福祉新聞Web)
- 成年後見制度の改正へ その概要とポイントを解説(日本FP協会 FP Journal Online)
※このページは改正法の概要をお伝えするものであり、個別の事案について結論を保証するものではありません。本改正は施行前であり、経過措置・条文・施行日の確定値は、公布後の官報・法務省の施行関係資料で改めてご確認ください。
※2026年6月時点の情報を掲載しています。法令・制度は今後の制度設計で具体化されます。最新情報は個別にご確認ください。
行政書士あおば行政法務事務所 齋藤光宏