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日本国籍取得後の手続き—本国籍の扱い
帰化許可後の戸籍編製・帰化届出・在留カード返納・本国パスポート返納・本国籍離脱手続を整理。米国・ブラジル等で自動喪失しない国の扱い、氏名設定、日本旅券取得までを横浜の行政書士が解説します。
帰化が許可されると、法務大臣の告示により日本国籍を取得します。このページでは、帰化許可後に必要となる一連の手続と、本国籍の扱いを整理します。
結論
- 帰化許可は官報告示日をもって効力が生じ、以降は日本国民として戸籍に記載されます。
- 許可から1か月以内に住所地市区町村に帰化届を提出し、新戸籍を編製します。
- 在留カードは法務局経由で出入国在留管理庁に返納します。
- 本国パスポートは、本国の在日大使館・領事館で国籍喪失手続・旅券返納を行います。
- 本国籍が帰化で自動喪失する国と別途離脱手続が必要な国(米国・ブラジル等)があり、本国法の確認が必要です。
- 日本旅券は、戸籍取得後(通常2〜3週間)に申請できます。
背景と制度の目的
帰化は、外国人から日本国籍を希望する意思表示に対し、法務大臣の許可によって日本国籍を与える制度です(国籍法4条)。許可は法務大臣の自由裁量処分で、官報告示日をもって効力が生じます(国籍法10条2項)。
国籍取得の時点で、入管法上の在留資格は失われ、日本国民としての法的地位が始まります。ただし、本国の国籍法がどう扱うかは日本法とは別問題であり、本国籍が自動的に失われる国と別途離脱手続が必要な国があるため、一連の付随手続が発生します。
許可から1か月:帰化届出
戸籍法102条の2
帰化許可者は、官報告示日から1か月以内に、住所地または本籍地の市区町村役場に帰化届を提出する義務があります。届出により、帰化者を筆頭者とする新戸籍が編製されます。
必要書類
- 帰化届書(市区町村備付)
- 帰化者の身分証明書(法務局が交付)
- 本人・家族の身分関係を示す書類(本国書類は翻訳付)
帰化許可を受けた方が既に日本人と婚姻している場合、配偶者の戸籍への入籍ではなく、原則として帰化者を筆頭者とする新戸籍が編製されます。夫婦それぞれの戸籍になる期間を経て、その後の届出で同一戸籍に入る形です(本人の希望と市区町村の扱いで変動あり)。
氏名の設定
帰化時の氏名は原則として自由に定められます。
- 漢字(常用漢字・人名用漢字の範囲)
- ひらがな・カタカナ
- 通称名使用歴があれば、通称名での登録が一般的
帰化前の氏名をそのままカタカナで登録する方、日本風の氏名を新たに選ぶ方など、選択はさまざまです。帰化許可申請の段階で氏名設定を決めておく必要があります。
在留カード・特別永住者証明書の返納
帰化により日本国籍を取得した時点で在留資格は失われるため、在留カード(特別永住者の場合は特別永住者証明書)は地方出入国在留管理庁に返納します。通常は法務局経由で返納することが多く、帰化届出の前後に案内されます。
カードの自己廃棄は認められません。必ず返納手続を行ってください。
マイナンバーカード・運転免許証の氏名変更
日本国民としての新しい氏名に基づき、以下の変更手続が必要です。
- マイナンバーカード(住民票の記載変更後、自動的に氏名変更)
- 運転免許証(警察署・運転免許センターで氏名変更)
- 健康保険証(協会けんぽ・市区町村国保など)
- 銀行口座・クレジットカード(金融機関に個別届出)
- 会社員の場合は勤務先への届出(給与振込口座・住民税など)
日本国パスポートの取得
帰化届出後、戸籍謄本が取得可能になった時点(通常2〜3週間後)で、日本国パスポートを申請できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請先 | 住所地都道府県の旅券事務所 |
| 必要書類 | 戸籍謄本、住民票、写真、身元確認書類、旧旅券(本国旅券、返納前であれば持参) |
| 手数料 | 10年旅券16,000円、5年旅券11,000円 |
| 発行期間 | 約1週間 |
旧旅券(本国旅券)は、本国籍離脱手続を踏まえて返納するため、日本旅券取得後に本国大使館で返納するのが一般的です。手続の順序は本国の制度により変わります。
本国籍の扱い—自動喪失か手続が必要か
国籍法14条は、日本国籍と外国籍を併有する方に対し、一定の年齢までに国籍選択義務を課しています(原則として22歳まで、2022年4月以降の成年者は20歳)。ただし、日本の国籍法が規定するのは日本法上の扱いであり、本国籍が実際に失われるかは本国法によって決まります。
国籍が帰化で自動喪失する国
ベトナム・フィリピン・ネパール・中国・韓国など、多くのアジア諸国は本国法に帰化による自動喪失規定を置いています。ただし、実務上は大使館での国籍離脱手続が煩雑なケースもあり、個別確認が必要です。
| 国籍 | 扱い | 手続 |
|---|---|---|
| 中国 | 自動喪失 | 通常は大使館での返納手続 |
| 韓国 | 自動喪失(家族関係登録制度への届出) | 大使館での届出 |
| 台湾 | 国籍喪失には本国申請が必要 | 台北駐日経済文化代表処 |
| ベトナム | 帰化により自動喪失の規定あり | 大使館での離脱手続 |
| フィリピン | 帰化により自動喪失 | 比較的シンプル |
| ネパール | 二重国籍不可 | 帰化前に国籍離脱を求められることあり |
| イラン | 国籍離脱を原則認めない | 国籍法5条2項の特別事情免除で対応 |
帰化で自動喪失しない国(別途離脱手続が必要)
米国・ブラジルなどは、帰化のみでは本国籍が自動喪失しません。別途、本国大使館で**国籍離脱手続(Renunciation)**を行う必要があります。
| 国籍 | 扱い | 離脱手続 |
|---|---|---|
| 米国 | 帰化では自動喪失しない | 米国大使館でRenunciation of Citizenship(手数料2,350米ドル程度、2025年時点) |
| ブラジル | 帰化のみでは自動喪失しない | 大使館で国籍離脱申請 |
米国市民権の離脱手続は手数料が高額で、宣誓手続・面接などを経る必要があります。手続には数か月を要することが一般的です。
本国法確認の重要性
本国法の国籍喪失・離脱規定は改正が続いています。帰化申請前、遅くとも許可見込みが立った段階で、本国の在日大使館・領事館に照会し、最新の取扱いを確認することが重要です。
二重国籍状態を放置すると、日本法上は国籍選択義務違反となり、本国法では不法な二重国籍として処罰対象になる国もあります。
帰化後に残る「日本国民ではあるが本国籍も保持」状態
本国法で離脱手続が困難・不可能な場合、事実上の二重国籍状態が生じることがあります。この場合、日本の入管・役所の対応は以下のとおりです。
- 日本国内では日本人として扱われる(戸籍・住民票・パスポート等)
- 本国に行く際は本国旅券の使用を求められることがある
- 日本国籍は14条の国籍選択を経ても、本国旅券の存在自体が制裁の対象となる運用は一般的にはない
ただし、米国のように本国法上も二重国籍を認めない運用が強化されている国もあり、将来的なリスクは個別に検討する必要があります。
帰化後の戸籍記載
新戸籍の身分事項欄には、以下が記載されます。
- 帰化の年月日
- 従前の本国(国籍)
- 従前の氏名
「帰化したこと」は戸籍から明らかになりますが、これは法律上の事実関係の記録であり、差別的取扱いの根拠にはなりません。
日本国民としての新しい権利
帰化により、以下の権利を取得します。
- 選挙権・被選挙権(国政・地方とも。選挙人名簿は次回調製時に登載)
- 公務員就任(一部の公権力行使職を除き就任可能)
- 社会保障(日本人と同一)
- 相続・戸籍(日本戸籍に編製)
- 日本国パスポートによる出入国(再入国許可不要)
一方で、兵役義務が本国法で課されていた場合、帰化により免除されることが多いとされます(本国法による)。
あおば事務所の対応
帰化許可後の一連の付随手続は、1か月〜3か月にわたります。期限のある帰化届出、戸籍取得のタイミング、旅券の申請・本国旅券返納の順序など、段取りを整理してご案内します。
本国籍の取扱いは国によって大きく異なるため、該当国の制度を事前に確認し、帰化申請中から見込みを立てておくことが、手続完了までの時間短縮につながります。