産業廃棄物収集運搬業許可 / yoken
産業廃棄物収集運搬業とは—一般廃棄物との違い・許可の必要性
産業廃棄物と一般廃棄物の違い、収集運搬業許可が必要になる境界、管轄が分かれる「積卸し区域」の考え方を、横浜市の行政書士が実務目線で整理します。
「産廃の運搬は、どこから許可が要るのか」。建設業・解体業・運送業の経営者から、ご相談の冒頭でいただくことの多い問いです。このページでは、自社の運搬業務に許可が必要かどうかを判断するための前提を整理します。
要点
- 事業活動で発生した廃棄物のうち、法で定める20種類前後が「産業廃棄物」に該当します。
- 他社から出た産廃を報酬をもらって運ぶ場合、原則として都道府県知事(または政令市長)の許可が必要です。
- 許可が要るのは積卸しを行う区域。通過するだけの都道府県に許可は要りません。
- 自社廃棄物を自社車両で運ぶだけなら許可は不要。ただしグループ会社(別法人)の廃棄物は「他社の産廃」扱いです。
- 神奈川県内で広く事業を行う予定なら、神奈川県知事許可を基幹に据える設計が合理的です。
背景と制度の目的
廃棄物処理法は、廃棄物を「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2系統に分けています。
一般廃棄物は家庭ごみが中心で、市区町村が処理責任を負います。これに対し、事業活動から発生する廃プラスチック類・金属くず・がれき類・汚泥など、法が列挙する種類の廃棄物は産業廃棄物として区分され、排出事業者に処理責任があります。排出事業者が自ら運搬できない場合、許可を受けた収集運搬業者に委託する仕組みです。
ここに許可制を敷いた狙いは、不法投棄と不適正処理の抑止です。誰が、何を、どこから、どこまで運んだかを追跡できるよう、許可・車両表示・マニフェスト・帳簿という4点セットで制度が組まれています。
根拠条文の要点
- 産業廃棄物の定義:廃掃法 第2条第4項
- 特別管理産業廃棄物の定義:同法 第2条第5項
- 収集運搬業の許可:同法 第14条第1項(特管は第14条の4第1項)
条文は改正が続いています。個別事案で引用する場合は、必ず最新の条文をご確認ください。
一般廃棄物と産業廃棄物の分け方
法律上の線引き
産業廃棄物かどうかは、排出元が事業者かと、法で定める種類に該当するかの2軸で決まります。事業者から出た廃棄物でも、オフィスの紙くずなど「事業系一般廃棄物」に分類されるものがあります。
| 区分 | 例 | 運搬の許可 |
|---|---|---|
| 産業廃棄物 | 廃プラスチック類、金属くず、がれき類、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ等 | 都道府県知事(政令市長)の許可 |
| 特別管理産業廃棄物 | 感染性廃棄物、廃PCB、廃石綿等、水銀廃棄物の一部 | 特管用の別枠許可 |
| 事業系一般廃棄物 | 事業所から出る紙くず・食品くずの一部 | 市区町村の一般廃棄物収集運搬業許可 |
特別管理産業廃棄物(特管)は、通常の産廃許可とは別の許可区分です。感染性廃棄物を扱う医療系・研究系事業者には特管の講習と申請が必要になります。
「廃棄物」と「有価物」の境界
排出元から処理料金をもらって引き取れば廃棄物、逆に対価を払って買い取れば有価物、という扱いが基本線です。環境省通知は、性状・市場取引実態・取引価値・占有者の意思などを総合判断すると整理しています。
有価物として買い取る業態なら、産廃許可ではなく古物商許可や自治体によっては金属くず商許可が必要です。「有償」と称しつつ実態は処理料金を受け取っているケースは、脱法的な運用として指導の対象になります。
許可が必要になる場面
「運搬のみ」と積卸し区域
廃掃法は、運搬のみを業として行う場合、許可を要する区域を「産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る」と定めています。したがって、自社の車両がどの県を通過するかではなく、どこで積み、どこで降ろすかが判断の起点です。
たとえば、川崎市内で積んで、埼玉県内の処分場で降ろすケースでは、神奈川県(川崎市を含む区域)と埼玉県の双方で許可が必要です。途中で走行する東京都は、積卸しを行わないのであれば許可は不要です。
自社運搬は許可不要
自社の事業で出た廃棄物を、自社の従業員が、自社の車両で運ぶだけなら許可は不要です。ただし以下は「他社の廃棄物」として許可対象になります。
- 元請から下請が引き受けた廃棄物の運搬(原則として元請が排出事業者)
- グループ会社の別法人の廃棄物を運搬する場合
- 他社現場の解体廃材を、処理料金を受けて運搬する場合
「自社運搬だから大丈夫」と判断したまま運搬を始め、後から無許可営業の指摘を受けるケースは現場で少なくありません。とくに建設業では元請・下請の契約形態によって排出事業者の認定が分かれます。早い段階で契約関係と排出事業者の所在を整理することが肝心です。
政令市が絡む場合の管轄
神奈川県内の政令市等は、横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市です。収集運搬業の許可は、積卸し区域と積替保管の有無によって、県庁か政令市か申請先が変わります。
| 積替保管 | 収集運搬の区域 | 申請先 |
|---|---|---|
| なし | 県内全域(政令市を含む) | 神奈川県(地域県政総合センターまたは本庁) |
| なし | 政令市内のみ | 当該政令市 |
| あり | 政令市以外の区域 | 管轄の地域県政総合センター |
| あり | 政令市内 | 当該政令市 |
横浜市の手引きは、積替保管を除く収集運搬について神奈川県知事許可を推奨しています。将来、横浜市から川崎市・県央・湘南へ営業を広げる可能性が少しでもあるなら、最初から県許可で設計したほうが合理的です。
よくある誤解・不備
通過する県にも許可が要ると思い込む
条文は「積卸しを行う区域」に限定しています。通過のみなら不要です。実務では経路の整理だけで許可数が減らせるケースが少なくありません。
政令市内のみで営業しているのに県許可を取ってしまう
政令市内に留まる事業なら、原則として政令市長許可で足ります。ただし県内他市への拡大が視野にあるなら、県許可を選ぶ設計もあり得ます。
自社現場の廃棄物と、元請から請けた運搬を混同する
元請が排出事業者となるケースが多く、下請として「運搬のみ」を請ける場合は許可が必要です。契約形態と廃棄物の発生主体を分けて確認します。
特別管理産廃を普通産廃の許可で運ぼうとする
感染性廃棄物や廃石綿等は別枠です。医療法人や解体業者は、特管の講習と申請を別途受ける必要があります。
あおば事務所の対応
初回相談では、事業概要と主要な排出元・処分先をお伺いし、「どの自治体の、どの区分の許可が必要か」をその場で整理します。営業計画次第で、政令市許可で十分なのか、県許可を基幹に据えるのかが変わります。
神奈川県・東京都・埼玉県・千葉県など複数自治体にまたがる案件は、関東地方知事会の共通様式・添付書類省略特例を活用して申請コストを抑える設計が可能です。ご事情を伺ったうえで、適切な取得順序をご提案します。