預託金を返して欲しい

(東京都 S様)

Q.私は、某会員制リゾートクラブの会員です。14年前に入会し、それなりに利用してきたのですが、数年前、泊まったホテルの対応が非常に悪く(他の客が嘔吐したものが掃除されずそのまま残っていた)、リゾートクラブへ苦情をだしたものの、きちんとした対応がされなかったので、それ以来、退会を考えるようになりました。

退会に際して、ひとつ心配なのが入会時に支払った預託金のことです。15年間無利子の据え置きなので、来年には退会し預託金の返還を受けようと考えていたのですが、先日、リゾートクラブより「経営状況の悪化」を理由に、預託金の返還を10年間延長したい旨の手紙が届きました。会員の意見を聞いたうえで、リゾートクラブ会則の規定により取締役会の決議を取りたいとの内容でした。その手紙には、同意できるかできないかの用紙と返信用封筒が入っています。

私は、すでに年金暮らしで預託金が返還されることを当てにしています。もちろん、同意できない旨の手紙を送るつもりですが、気になるのは、取締役会の決議がされると預託金の返還が延長されてしまうのかどうかという点です。経営状況が悪いのなら今のうちに預託金を返してもらった方がいいと思うのですが、これはできるのでしょうか?

——————(長文のため、要点のみに編集してあります。)——————

A.あなたのケースでは、リゾートクラブ会則変更の法的な性質が問題となります。つまり、会則に基づいて行う取締役会の決議が、全会員に効力を及ぼすかということです。

全会員に効力を及ぼすのであれば、あなたが非同意を表明しても預託金の返還期限は10年先になりますし、そうでないのなら、預託金は当初の期限には返還されることになります。

この点については判例がありまして、その判決の要点をご紹介すると次のとおりです。

「会則は、会社定款などと異なり、その変更が構成員の全てを一律に拘束するものではなく、契約当時の個々の契約内容を表すものに過ぎないので、会則を変更した場合は、それのみで全会員を拘束するものではなく、会員ごとの個別の同意を必要とするものである。」

つまり、あなたが心配されている預託金返還期限の延長の決議は、あなたが同意しない限り、あなたに対しては効力がないということです。

今、まずあなたがすべきことは、同意をしないことであり、その意思表示も後々争われないように、普通郵便ではなく内容証明など証拠の残る方法でするべきです。

その上で、預託金の据置期間である満15年の到来とともに、預託金の返還請求を求めるというのが当職のアドバイスです。ちなみに退会することと預託金の返還を請求できる権利は別のものですので、会費などの負担があるようであれば、退会だけ先にしても構いません。

また、今すぐ返還を求められないかということについては、据置期間が会則に定められている場合は、それが契約の内容になっていると考えられますので、それは出来ないと考えられます。但し、会則ほか契約書などの中に、「経営状況の悪化のときは、据置期間を待たずして返還を求めることができる」などの特約が盛り込まれている場合には、今すぐにでも返還を求めることができます。その点をまずご確認ください。